第五十四話
アナベル・ガトー中佐とカリウス・オットーの専用機に使った全て私達が採掘してきたもので作られている。
アクシズどころか連邦でもこれほど使われることはないだろうほどの希少金属が豊富に使われている。
もっともこの2人に思い入れがあるわけではなく、これはハマーン専用MSを製造するにあたって現状の自分達が全ての技術と持ちうる資源を全て投入してどの程度の物が作れるのかの試験と恩を着せるための行為だ。
まぁ、結果は通常の人間ではとてもではないが操りきれない代物となったがな……操縦に難点を残した要因としてOSが無いこともある。OSが完成すればもう少しマシになるだろうが、今はそんな機体では意味がないと大型スラスターユニットを小型化することでGP01fbより推力は劣るようになったが燃費の良さは向上させ、操縦性を改善することに成功した。
これでノーマルの人間……とは言ってもエースだが……でも使えるようになったはずだ。
「なかなかいい機体ができたが……これを求められても絶対もう作らないぞ」
「いくつかはアレン博士の削り出しからの自作部品ですからね。量産なんて絶対無理です」
その通り……しかもこれ、整備部品を定期的に作らないといけないという問題もあるため、2機以上となると絶対無理だ。
「しかし……このザク、名前を付けるべきだろうか」
「完全に調整が終わればアクシズに引き渡されるんですから名前ぐらいは決めておいた方がいいと思います。でないとザクII・アレン型とかになっちゃいますよ」
「徹夜して考えるぞ!!」
スミレの言う通り、アレン・ジールの二の舞を演じるところだった。
結局このザクはアナベル・ガトーが乗るということで異名から取り、ザクIIナイトメア型、省略名ザクN型と決まった。
カリウス・オットー?彼も賛成したので問題なかろう。
そして、最終調整ということでアナベル・ガトー中佐、カリウス・オットー中尉(元は軍曹だったがアレン・ジールに搭乗する際に特例で少尉へ、アクシズに着いて作戦成功の功績により中尉へ昇進)とイリアやプル達(後期型を除く)が模擬戦をすることになった。
元々訓練が目的で製造していたのだから当然といえば当然だが……ん?
「訓練にザクN型を使うということは……もしかするとこれは自分で自分の首を絞めてるのではないか?」
「……今気づきました」
2人してなんという間抜けだ。
アクシズはまだしばらく戦争の予定はないはずだから特注だらけでも問題ないとしたのにまさか自分達の訓練が1番消耗が激しくなりそうだという事実に頭が痛い。
「……これは時間があればストックを用意しておくべきだな」
「ですね」
さて、模擬戦の結果だが……1対1のハンデ無しガーベラ・テトラだとカリウス中尉はもちろん、ガトー中佐にもイリア達が勝利を飾った。
もっともこの勝利は射撃が解禁されている上に、ガトー中佐達は実機では初運転である点を考えれば当然の結果とも言える。
とはいえ、プルとプル3に関しては中破よりの小破判定、プルツーは小破判定を貰っているので完勝とはとてもじゃないが言えない。
ちなみにイリアは見事被弾なしで完勝を飾っている。その戦いぶりは前の戦いで負けたのはアレン・ジールに負けたのであってお前に負けたのではない!と語っているような戦いぶりだった……まぁ実際そのような思念も感じたがな。
模擬戦で目についたのはやはりザクN型の機動性、加速性で、それをによって敵を翻弄する姿……と共に操縦者にも相応の負担を掛けるため、ガトー中佐達のようなベテランパイロットでも長時間の操縦はキツイようで、模擬戦は1日に1度しか行えず、4日も掛かることになったことだろう。
もう少し習熟が進めばプル達ではそう簡単には勝てなくなるだろう。
イリアに関しては順調に——
「私だけ仲間はずれというのは面白くないのだが?」
とむくれているのはシャア達の離脱で更に忙しさが増した上に、組織のトップであるため簡単には実機訓練が行えなくなったハマーンである。
「技術が上がってきたイリアとの訓練でハマーンも成長している——」
「論点をずらしても無駄だ。私も参加したい」
「しかし、摂政がそう簡単にMSに乗ることは——」
「参加したい」
「模擬戦をするにしても対戦相手が萎縮してしまう——」
「参加したい」
「そろそろハマーン専用機を開発する予定で——」
「参加したい」
ダメだ。これは無限ループというやつだな。
「ハァ……わかった。ハマーンであることを隠して参加できるようにする」
「良きに計らえ」
私の返答に満足気な表情を浮かべ、鷹揚に頷くハマーンにイラッとしたのでエロ触手訓練を10割増しでちょっとした仕返しをしてやる。
この程度で許すのだから私の優しさに感謝するんだな。
それにしても8本になってからというもの、訓練が楽になったし、反動がエロ触手で完璧に抑えられるようになったため私自身の負担も減った。
「「「……」」」
足腰が立たなくなり、小刻みに痙攣しているハマーンを見て、プル達は怯えているようだ。
「大丈夫、お前達にはこのようなことはしない」
そう伝えるとホッとした空気が伝わってくる。
……今は、だけどな。