第五百四十話
「接近戦なら勝てると思ったかハマーン!!」
「フッ、自信があるようだが、それは過信ではないか、プルツー!!」
可憐に美しく舞う白と圧倒的存在感を放つ緑は互いに接近する意思を共有したことで瞬きの間に接触する距離となり、両者共に両手に握るビームサーベルを振るう。
一太刀で決着するぐらいならこれほど苦労することはない。
お互いに必要最低限の動きで回避して、続いて返す刀でもう一太刀。しかし、それも当たることなく宙を斬る。
「ぐっ――」
そして高速で移動するため、何もしなければすれ違って距離ができてしまう。プルツーはそれも問題ないが、ハマーンは周りから攻撃を受けることになる。
それを防ぐためにプルツーから離れぬようにハマーンは急旋回を行うが、通常行うAMBACやスラスターによる旋回や集中砲火の回避よりも強いGが掛かりハマーンから声が漏れる。
対してプルツーはその強化された肉体によって同じ行動をしても負担はあるものの余裕はまだある。
「(これは長期戦はキツイな)――だが、この距離ならビーム兵器も通じる」
「その程度でクィン・マンサに勝てるとでも言うのか!」
ビームサーベルの間合いというより殴り合うような距離にまで近づいているのでIフィールドの内側にハマーンがいるためビームが通じるというのは正しい。だが、狙いはそれだけではない。
そもそもキュベレイとクィン・マンサでは機体サイズとその手に握る大型で高出力なビームサーベルの刀身を比べれると微妙な間合いを保てば一方的に攻撃される可能性が高いため、MS戦ではありえないほど肉薄することになった。
それに加えて――
(これなら他の奴らのビームも届かん)
周囲を囲む量産型キュベレイ、ハンマ・ハンマはビーム兵器が主軸である以上、クィン・マンサを守るIフィールドはハマーンすらも守る盾となる。つまり、実質1対1ではなく、正しく1対1を実現したのだ。
「くっ、結局やっていることは避けることか!!」
「未熟者め、戦いに感情を持ち込み過ぎているぞ」
速度を落とさず、方向だけを変え続けてクィン・マンサを纏わりつくように飛び回りながら斬りつける。
しかし、それも巨体にも関わらず俊敏な動きを見せるクィン・マンサに躱す。サイコミュで直接操縦するからこそできる芸当だ。