第五百四十一話
激しい斬撃の応酬が繰り広げられ、十数回。
とうとうその刀身はMSの装甲を溶かすこととなった。
「チッ」
「そろそろ現実が見えてきたか、プルツー」
「バインダーの表面を溶かした程度で偉そうに!」
プルツーが言っていることは事実で、装甲のコーティングを溶かしたに過ぎない。だが、ダメージと言えるほどではないにしても一方的にやられたのも事実だ。
そして経験が少ないプルツーは知らず知らずのうちに攻撃の回数が減り、防御を重視するようになる。それをニュータイプとは関係なく、パイロットの経験として察知したことで攻め手を変更することにした。
ビームサーベルでクィン・マンサの両腕をできるだけ下に意識をさせるように振るうと狙い通りにプルツーは動いてしまう。
そこでビームサーベルを手放し、切り札――というには微妙だが、唯一の追加武装を――放り投げる。
それは新兵器でもなんでもなく、一年戦争から使われている……いや、むしろ最近は数は減少傾向にある。
「ハッ!この期に及んでクラッカーなどと笑わせる!直撃したところでクィン・マンサはびくともしないぞ!」
と言いつつ胴あたりに投げつけられたクラッカーをきっちり回避しながら失笑する――が――
「――ファンネルッ!」
ファンネル同士が戦っている中、1基のファンネルがクラッカーに近づく――いや、近づくという表現は正しくない。
正確には突っ込んでいき、衝突する。そうすることでクラッカーの進行方向を変えた――クィン・マンサの頭部へと。
「何?!」
クィン・マンサの頭部にはコクピットがあり、いくらミサイルに耐える装甲を持つとは言っても頭部がそれほどの耐久があるわけではない。何より耐えられるとしても衝撃は伝わり、パイロットにダメージがある。それを狙うという意味もあった。
「くっ――こんなもの!!」
なんとか手首を回転させ、ビームサーベルでクラッカーを両断。
しかし、クラッカーを両断したことで誘爆してしまい、直撃ではないものの頭部近くで爆発してしまう。
「キャア?!」
「チィ、やりきれんか!」