第五百四十二話
「後3発」
比較的重量が少ないクラッカーならキュベレイの機動力を落とすことがないということで採用されたものであるとはいえ、それも数を増やせば意味がないので4発しか用意されておらず、1発使えば当然後3発しかない。
しかもクラッカーという手札を1度見せてしまった以上は、そこまで高火力というわけでもなく、投擲である以上はスピードも遅い、となると撃墜どころか有効打にするだけでもそれ相応の工夫が必要となる。
「だが流れは確実に掴んだ」
クィン・マンサの唯一の弱点とも言える頭部に強い衝撃を受け、いい加減余裕がなかったプルツーは更に余裕がなくなり、完全にハマーンのペースとなっている。
「離れろ!!」
胸部メガ粒子砲を拡散させて放つが――
「その程度ニュータイプでなくても読めるわ」
苦し紛れの1手など機体の武装が全てわかっているのだから予想がつくので難なく躱し、お返しにとサーベルを脚部――太ももあたり――に叩きつけ、また1つ傷が生み出される。
「その防御性能は厄介だな」
完全にペースを掴んでいるにも関わらず撃墜に至れないのはプルツーの強さ以外にもIフィールドを除いても一般機を凌駕する防御性能あってのことだ。
そして明らかに圧されている現状に業を煮やしたプルツーが思い切った行動を起こす。
「――離れないなら――これでどうだ!!」
「これは勝負に負けたと宣言したに等しいな。しかし、Iフィールドを切るとは思い切ったな」
Iフィールドの内側で戦い続けるという離れ業を成し遂げたハマーンだったが、逆に内側に居続けるならIフィールドを張るメリットはなく、むしろデメリットがあった。
それは――
「くっ!早速来たか!」
ハマーンに襲いかかるのは今まで傍観に徹していた他のプルシリーズが操るファンネルだ。
Iフィールドがなくなればファンネルのビームも届く。そのビームはライフルやサーベルのビームと比べると低出力である。
つまり――クィン・マンサを誤って撃ったとしても持ち前の防御性能で耐えてしまえるためにハマーンが一方的に不利となる。もちろんクィン・マンサにも限界はあるが。
「だが、私は負けぬ!」