第五百四十四話
「今になって増援か、あれは確かミソロギアとかいう要注意――」
ドライセンを操るパイロットは続く言葉を紡ぐことは一生亡くなった。
フル・フロンタルに向かって一直線に進むために邪魔だとレナス3機のライフルをコクピット一箇所に集中して受け、自慢の装甲も役に立たずに守るべきパイロットと共に溶解してしまう。
「進路クリア。予定座標まで後10、9、8、7――――到着。フル・フロンタルを捕捉。援護を開始します」
「話は通していないが……理解が早くて助かる」
アレンが何かを伝えたわけではないがレナスの有効射程に入ると同時にフル・フロンタルは包囲が崩れることを前提に動き出す。
「ハマーン閣下と合流させることが優先。敵は他のやつに押し付けてれるなら押し付けておけ」
ハマーンに死なれたら困るが、この戦いの勝敗に関しては手助けするつもりはないアレン。そうでなければフル・フロンタルの合流という迂遠な方法ではなく最初から直接レナスを向かわせばいいのだ。
「あわよくばフル・フロンタルも何か起こしてくれればいいのだが……そしてそれに共鳴してこの世界のプルシリーズも、というのは贅沢な話か」
アレンの思惑はハマーンだけに限らない。
ニュータイプは良くも悪くも周りの影響、特に心の影響を受ける。ならば光り輝くハマーンの周囲にニュータイプを増やせばもっと面白いデータが取れるだろうという企みである。
もしネオ・ジオンが反乱軍に負けるようなことがあればハマーンやフル・フロンタルを引き抜く……いや拉致するという選択肢も視野に入れていたりする。
拉致して時渡りをしてしまえば完全孤立、救いの手も逃走することも期待できない完全犯罪の出来上がりである。
「強化処置を受けているマシュマー・セロとキャラ・スーンは……今のままの方が何かを起こす可能性が高いか」
マシュマーとキャラは強化されてのニュータイプだが、ニュータイプには違いない。しかし、彼らのハマーンへの忠誠は強化処置後も変わらず、むしろハマーンから適度に離して焦らした方がいいとアレンは判断したのだ。