第五百四十五話
「アレン代表が動いたか」
ファンネルにしては気配が強い、人間にしては弱い何かが高速で移動を開始したのを感じる。
「この方角……フル・フロンタルの方向に向かっているのか……直接援護するつもりはないようだが、助かるのは事実か」
「余所見をするとは余裕だな。ハマーン!!」
「それは自分の機体を見てから言うんだな」
プルツーがIフィールドを切ったあたりから調子がいい。
知覚範囲が広がり、キュベレイやファンネルがいつも以上に動いてプルツーの攻撃は当たる気がしないし、先程から周りにいる量産型キュベレイやハンマ・ハンマを牽制というには殺意が高いミソロギアの主砲によって私に余裕を保たせてくれている……この距離で戦艦の主砲をMSに頻繁に回避行動を取らせるほどの精度というのは恐ろしいがな。
おかげでクィン・マンサの四肢はサーベルによる溶解痕だらけになっている。もう少しサーベルの出力が高ければそれを全て斬り落として勝負はついていただろう。言っても詮無きことだが。
それに対して私は無傷だ。というよりも離れた敵からの攻撃は避けるし、クィン・マンサの攻撃は無傷でなければ基本致命傷となるから当然といえば当然だ。
強いて言えばファンネルがいくらかやられたぐらいだが、言った通りファンネルが思った以上に働いているのでまだ残基には余裕がある。
「引き際を誤れば無駄死にしかならんというのがわからんようだな」
「装甲を傷つけただけで偉そうに!」
「それ以上を受けて引けるほど私は甘くないことはわかるだろうに」