第五百四十六話
「ハマーンッ!」
「随分と遅いご到着だな。シャ――フル・フロンタル」
「存外元気で何よりだ」
「このぐらいどうということはない。そちらは随分と苦戦していたようだな」
「クッ、言ってくれる」
レナスの援護によって無事合流できた2人は軽口を叩くが、客観的には包囲されているMSが1機から2機に変わっただけであり、大勢に変化はない……ようにしか見えない。
しかし、ハマーンが覚醒状態で、更にフル・フロンタルが加わるとなればたかが1機の増援では済まされない。
そもそも全体の流れはハマーンが握っていたのだからエースが増えれば圧倒的――
「では、私が周りにいるやつらを相手をする。ハマーンは引き続きあのデカブツを――」
「それがそうもいかないのだ」
「どうかしたのか」
「……機体がイエロー、ファンネルのほとんどがレッドアラートが点灯中だ」
機体のコンディションを表すアラートがカラフルに光り輝いて悲鳴を知らせていた。それの多くは無茶な回避を行ったことによるスラスターの消耗である。
「――なるほど、あれほど無茶な戦い方をすれば機体が悲鳴をあげても仕方ないか」
「ついでに言えば、痛みこそまだないが肋(あばら)骨も1本は確実に折れているし、他にも確実に罅が入っている。後内臓も怪しい」
機体に関してはアレンの予想通りであったが、実はハマーンの肉体は思った以上にダメージを負っていた。
アレンが気づかなかったのはミソロギアの機体のようにバイタルチェックをしていないこととハマーン本人が自覚がなく、思念で察知できなかったのだ。
「……思った以上に満身創痍のようだな。後退を――」
「不可能だろう。私を逃がすとは思えん。例えできたとしてもこいつらを野放しすると拮抗が崩れる」
「それはそうだが……そんな状態で大丈夫か」
「やらねばならん。ここで私が退いては士気が下がる」
「被弾によるアラートではないからすぐには影響はないだろうが、討たれたらそれどころではないぞ」
「……あのキュベレイでも奪うか」
包囲している量産型キュベレイをチラッと見てぼやくがさすがにツッコミが入る。
「さすがに難しいだろう」
「冗談さ。さて、私に余裕がなく、貴様がここにいる。ならば――さっさと片付けるぞ。背中は任せたぞ」
「ああ、背中は任せるといい。だから無理はするなよ」