第五百四十八話
それは前触れもなく、突然起きた。
ハマーンの乗るキュベレイに突然衝撃が走る。
「なっ、にぃッ!!」
激闘を繰り広げていたには違いないが、被弾したわけでもなく、操作をミスしたわけでもない。
コンディションアラームがイエローであるからと確実に何もないというわけではない。だからこそイエロー(注意)なのだ。
素早くコンディションが映るモニターに視線を走らせると――
「チィ!右のスラスターか?!」
バインダー内のスラスターの1つが何らかの理由で爆発。機体にはそれほどダメージはないが並ぶように配置されていた他のスラスターまで損傷してしまう。
「これで終わりだ!」
「甘く見られては困るな。この程度、ちょうどいいハンデだ!」
と威勢よく言ったはいいものの、機体が万全で覚醒状態だったことで優位に立っていたがMSの命とも言える機動力を大幅に削られるとなればかなり厳しい戦いというのはハマーンもわかっているが弱気になろうものなら相手もニュータイプなので察知されてしまい、不利から絶体絶命となっても不思議はないので気だけは張る。
しかし、焦ったのは当人よりも――
「ハマーンッ!」
「「ハマーン様!!」」
近くで戦闘をしていたフル・フロンタルやマシュマー、キャラ、イリア達である。
「邪魔だ!どけえぇ!!」
そして真っ先に行動に出たのはマシュマーだった。
自身も肉薄する戦いを繰り広げているにも関わらず無理やり押しのけ、真っ直ぐにハマーンの下へ駆けつけんと加速する。
「あんたらは私が相手してやるよ!」
マシュマーを追おうとするスペース・ウルフ隊に一斉射でそれを阻止し、更にマザーファンネルを展開して更に追い打ちを掛ける。
「ここは任せるぞ。ギーレン」
「「ハッ、イリア様。お気をつけて」」
そう言い残し、イリアもマシュマーの後を追うようにハマーンへ下へと向かうが、辿り着くにはまだまだ距離がある。
「ぐっ!これは――」
プルツーを相手にスラスターを欠いた状態ではさすがに劣勢を強いられている。
機動性、運動性、機体バランスの崩壊しているのだから無理もない。
今までとは逆の立場となりキュベレイの装甲に大きな溶解の後を作り続けられている。
「このままでは――」
負ける。
言葉にはしなかったが脳裏には自身の敗北を意識してしまう。