第五百五十一話
「無様だな。負けたわけでもなく、勝ったわけでもなく、自爆とは……」
「ハマーン様の御命が無事であってこそかと」
「わかっているが――」
負けたわけではない。しかし、新しいキュベレイと引き換えにしては戦果は乏しく、指導者である自身が前線から離脱しなければならない時点で負けに等しい。
指導者の前提として死んではならない。至極当然のことだ。
しかし――
「このままでは被害が拡大してしまう」
今はフル・フロンタル、マシュマー・セロ、キャラ・スーンが交互に相手をしているクィン・マンサであるが、ハマーンが退く前とは違って自身の親衛隊とプルクローン、スペースウルフ隊が入り交じる混戦となっている。
混戦となっていることでハマーンが抜けたことによる負担の全てを背負う必要がなくなったフル・フロンタルだが、問題は負担を分散することで比例するように被害が拡大していた。主に親衛隊に。
親衛隊はその能力もだが、最も重視されて選ばれている要素は忠誠心や信用である。
忠誠心や信用などは能力のある者を見つけるよりも難しく、時間が掛かる。だからこそアレンとの初対面で親衛隊に内通者が判明した時は大騒ぎとなった。その反面、ニュータイプどころかエスパーと言える能力で他の親衛隊の忠誠、信用が裏打ちされる形となったので結果的には更に信頼度が増したのだが。
そんな親衛隊は今、ハマーンを逃がすために追撃しようとするプルクローンやスペースウルフ隊と正面から戦い、死闘を繰り広げている。
「しかし、私は――」
何もできない。
それは声として出なかったが、イリアにはしっかり聞こえた。
「ハマーン様、今は帰還を――ッ!」
「ここでアレを討てば俺達は英雄だぜ!!」
「命の賭け時だよな!!」
恐れ多くも励まそうとした矢先に、行く手を阻む者達が現れた。
数は6機。
ガザCやガザDと旧式化したMSで構成されているその部隊は正しく雑兵である。
しかし、この場において、その雑兵は金より貴重な時間を費やされる立派な障害だ。
「くっ、大した奴らではないが――」
1分、余裕をみて2分もあれば殲滅できる程度の取るに足らない存在だが、満足に動けないキュベレイを守りながらとなると話は変わる。
本来、既に戦闘不能に等しいキュベレイを破棄してハマーンをリゲルグに乗せて帰還させればこのような苦労はしないのだが、問題はキュベレイのフレームが歪み、脱出装置が作動できなそうなことと、ハマーンがパイロットスーツを着ていないため、その正しく作動するかどうかわからない脱出装置が中途半端に作動して空気が抜けるようなことは回避した。コクピットを守る装甲をビームなどで破って救出すること時間もない。
これを機にちゃんとパイロットスーツを着るように念を押そうとイリアは思ったそうだ。
「――これは――」
ハマーンが何かを感じ取ると同時に迫っていた6機のMSはビームに貫かれ火球へと変貌を遂げた。
『力が欲しいか』
声ではない声がハマーンに流れ込んできた。
『力が欲しいか』
「ああ、欲しい」
『ならばくれてやる。扱ってみせろ』
そこには――