第五百五十三話
戦局は一変する。
その激変の中心にいるのはもちろん――
「ハハハッ、なんだこれは!!今まで乗っていたMSがおもちゃのようではないか!!」
その巨体に似合わぬ残像すらも見えそうなほどの速度で縦横無尽に駆け、相手がIフィールドでなければ装甲など存在せぬとばかりに貫くメガ粒子砲を垂れ流して次々とMSを爆散させる。
「最高の自分を描くとはよく言ったものだ。指一本すらも思い通りに動くというのは不思議な感覚だ」
MSの骨格全てをサイコフレームで作られているためにその操作性は間違いなくミソロギアのMSの中ではトップである。
「下手をすると身体よりも思う通りに動いているな」
人並み以上には肉体も鍛えているハマーンだが、それをも上回る操作性だと恐れおののく。
「そして――この火力っ!」
メガ粒子砲は言わずもがな、ファンネルの火力もキュベレイのものとは比較にならなず、装甲自慢のドライセンが一撃も耐えれずに貫かれているのだからその力は半分ほどしか出せていない。
なのでファンネルによるオールレンジ攻撃などという手段は取らず、MS1機に対してファンネル1基で済んでしまうため、実質単独で20基以上のMSの戦力と言えるだろう。
「それに加え守りにIフィールドとは……甘いことは言っていられないが……少々卑怯ではないかと思わなくもないが……悲しいが、これも戦争だ」
ビーム兵器は通じず、実弾は当たらない、唯一ビームを通すことができる方法である近接戦闘は仕掛けることすらも本体とファンネルの弾幕によって阻まれる。
もっともハマーンは知らないが、本来の弱点である実弾も当たりどころが悪いかミサイルでもない限りは問題にならないのだが。
「更には――これよ!」
Iフィールドによるビーム偏向。
これによって機体がどこに向いていてもビームを曲げて全方位に射撃を可能にしていた。
クィン・マンサよりは小さいとはいえ、MSとしては大きめ(最近のネオ・ジオンのMSの中では同サイズ)であるため、どうしても旋回速度が劣るが、これなら機体を細かく旋回する必要はなくなる。
「しかし……砲の配置がそれ向きではないような?」
実のところ、この試作機にそんな機能は存在していないし、アレンもそのような意図していない。
これはハマーンができると思い、サイコフレームが反応してIフィールドを操作して起こった偶然である。