第五百五十四話
「この気配……ハマーンのようだが……」
「さすがハマーン様だ!!ハマーン様バンザーイ!!」
ハマーンの戦い振りを見て驚いているのは敵だけではない。
味方も得体の知れないMSに対して視界の端で注視していた。
その中にはクローン部隊と戦いを繰り広げるフル・フロンタルとマシュマーもいた。
「まるで化け物だな」
「ハマーン様バンザーイ!」
もう昔と言えるほど前に連邦のMS……アムロの操るガンダムを彷彿とさせるその戦い振りに感嘆する。
「あれがミソロギアのMSか、協力するのなら最初からアレを出してくれればいらぬ苦労をせずに済んだ……と思うのは傲慢というものか」
最初からあのキュベレイ頭に乗っていたなら、と思うフル・フロンタルの思いは当然だろう。しかし、同時にミソロギアという組織はネオ・ジオンとは別組織であるということも知っているのでその思いが厚かましいこともまた承知しているが、つい思ってしまうのは仕方ないことだろう。
ハマーンの進む軌道に敵は無し。
阻む動きするもの全てデブリと化す。
士気挫かれ近寄りしものは次第に減った。
「これは趨勢は決し――」
「ハマーン様バンザーイ!ハマーン様バンザーイ!!」
「ええい!!うるさい!!お前は機体が限界に近いのだからとっとと帰還しろ!」
ハマーンの戦線復帰で集中力が途切れて、発光現象も弱まり、すっかり強化人間ではなく狂化人間、俗称・狂信者に成り下がっているマシュマーに怒鳴って帰還を促すフル・フロンタル。決してうるさいから撤退しろというのではない……きっと、多分。
「何を言う?!ハマーン様のお側で戦える栄光を逃してなるものか!!」
「チィ、これだから強化人間は!」
強化人間と共に戦場に赴いたことがあるフル・フロンタルは吐き捨ているように言う……が、残念。その狂化人間は仕様(元から)です!!
とはいえ、マシュマーが乗るザクIII改は既に限界であることは外からでも把握できるほどになっている。
そのせいでクローン部隊はまず数を減らすべく、マシュマーを集中して狙っていて、フル・フロンタルがフォローしてなんとか凌いでいる。
「ホラホラホラ!どうしたんだい!余所見なんてしてたら死んじゃうよ!!」
「そんな機体で私に勝てると思っているのか!」
故に今、プルツーを相手しているのはキャラ・スーンだが、ゲーマルクとクィンマンサの相性は最悪で、ほとんどの武装がビーム兵器であるゲーマルクの攻撃はクィンマンサのIフィールドに尽く防がれ、ろくにダメージを与えることができず、逆にゲーマルクは損傷を増やしていく――が戦闘に支障が出るほどの損傷は負っていない。
その原因はプルツーはハマーンとの死闘、フル・フロンタルとマシュマーとの激闘と一歩踏み間違えただけで死に至る戦いを積み重ねたことで疲労が溜まり、しかもハマーンが猛然とこちらに近づいてきていることで気が逸れてパフォーマンスが落ちてしまい、有利であるのに仕留めきれずにいるのだ。