第五百五十五話
ハマーンは道を切り開きながらフル・フロンタル達と合流――
「お前達はそこの者達と遊んでいろ」
することはなく、そう言い残して速度をそのままに駆け抜け――クローン部隊を数機落として戦線を突破する。
「しまった!!ハマーンの狙いは本隊――グレミー様か?!」
新型とはいえキュベレイ1機ではとてもではないがクローン部隊を抜くなど機動力的には可能でも攻撃を躱しながらとなると不可能だった。
しかし、今はIフィールドを展開し、クィンマンサ、キュベレイ、ハンマ・ハンマの主武装であるビーム兵器を無効化され、数少ない実弾はメガ粒子砲で迎撃されるために止める手段がない。
そして何より――
「くっ、速い?!」
クィンマンサは決戦兵器とされ、圧倒的火力と防御性を重視して作られている。もちろん機動力や運動性も並外れたものではある。
しかし、ハマーンの乗る機体は試作機と言ってもアレンがプルシリーズに、ニュータイプに合わせて作り出した機体を基としている以上、それは量産機であったとしても機動性、運動性を重視したものとなっている。更にはサイコフレームは従来のフレーム材よりも軽いため軽量化されているため機動力も運動性もキュベレイ・ストラティオティスを上回る。
ただし、試作機であるためキュベレイ・ストラティオティスと比べると機体が軽すぎるため操縦感覚が違い過ぎる――が、ハマーンは初めて乗る機体なのだからそれに違和感を覚えることはない。
「ここまで来たらもう勝負はついたも同然だが――消えよ!!」
艦隊を護衛するMSがその巨体をもってハマーンを阻もう前に出るが、一斉射、また一斉射と重ねただけで全滅する。
ハマーンとフル・フロンタルにできるだけ数を当てるために護衛を最小限にしていたため、これで護衛していた部隊はいなくなった。
更に進み、反乱軍の艦隊がもうすぐ射程に入る――というところで――
「諦めもせず、逃げもせずに向かってくるかグレミー・トト。その根性は認めてやろう。しかし、その機体はどうなのだ」
このまま戦艦に居てはただ殺されるだけと思い、わずかに残る自身の護衛と共にMSで出撃した。
問題はそのグレミーの機体である。
「なぜガンダムタイプなのだ?」
そう、なぜかグレミーが乗るのはガンダムタイプだったのだ。
その機体の名はORX-013・ガンダムmk-Vである。
なぜこんな機体を反乱軍が持っているかというと地球連邦の横流れ品だ。
アムロと共に逆行してきたνガンダムという未来技術が手に入り、それまでに研究をしていたMSは陳腐化とまでは言わないが、重要性はかなり下がった。つまりガンダムmk-Vの存在そのものも重要性が下がり、横流しされることとなった。
そしてなぜグレミーがガンダムmk-Vに乗ることになったかというと……単純に機体がなかったからだ。
ドーベン・ウルフの原型とは言ってもどこからどう見ても連邦軍の機体であるガンダムmk-Vはその性能の高さとは裏腹に過激派主流である反乱軍の中で乗りたい者はおらず、仕方なくカラーをオレンジ色に染め、グレミーの専用機として調整したという妥協の結果である。