第五百五十六話
「ふん、この程度か」
「な、何なんだ。そのMSは?!」
ガンダムmk-Vを十全と扱うことこそできないがグレミーではあるが、十全ではないだけで十分に戦える技量であった。
しかし、今のハマーンをどうにかするには力不足という言葉では足りぬほど不足だった。
両腕はなく、腰から下もなく、スラスターはメインもサブは溶かされ、武装ももちろん全てが破壊され、コクピットハッチは逃れられぬように殴りつけて変形させ、脱出装置すらも作動しないようになっており、無傷なのは頭部のみとなっている。
その無傷な頭部も掴まれているのだから無事と言えるものかどうか。
「ドーベン・ウルフの原型機のようだが、随分と仕様が違ったな。まぁこの機体を前に誤差でしかないが」
このガンダムmk-Vは反乱軍に引き渡される前に改修されていた。
原作よりもνガンダムから得た技術から準サイコミュの研究が進んだことで若干の小型化、その分だけジェネレータを大きくし、出力が向上、それによりインコムが4基へと増設されている。
とは言ってもそれらは全て瞬く間に溶かされて宇宙デブリとなったが。
グレミーの護衛?そんなものは最初の一射で消し飛び、2射目には近くにいたムサイ級3隻が中破、今は離脱を試みているところである。ちなみに中破で済んでいるのは戦いの終わりが見えたことで、戦後に少しでも取り込み、戦力回復を目論んでいるからである。落とそうと思えば中破にするよりも簡単に落とすことができた。
「私はこんなところで死ぬわけには!!」
コクピットで叫ぶが、ガンダムmk-Vはグレミーの思いに応えることはなく、身動き1つとしない。
ニュータイプなら奇跡もあったかもしれないが、グレミーはオールドタイプなのでその可能性も皆無である。
「残念だったな。勝利の女神は私に微笑んだようだ。そうでなければ負けていたかもしれないな」
勝利の女神にしては随分とマッドなサイエンティストで、男性であるが勝利を齎したのは間違いない。
もっともその勝利の女神が動くきっかけとなったのはハマーンの発光現象と奮闘したことを称え、データ欲しさに贈られたMSである以上、勝利の女神を引き寄せたのはハマーン自身ではある。
「ちっ。追いついたか」
「グレミー様を離せえぇ!!」
プルツーが追いついた。
グレミー救出に来たはずではあるのだが、全くそれを考慮しない遠慮のないメガ粒子砲の斉射がハマーンを襲うが――
「Iフィールドというのは便利だな」
それらは全て捻じ曲げられ当たることはない。