第五百五十八話
「これで終わりか。良いデータが手に入った……が、クィン・マンサとこの世界のプルツーとの戦闘データが手に入らなかったのも惜しいがプルツーが覚醒しなかったのは残念だ」
後一押しでおそらくプルツーも発光現象を引き起こしただろう。それだけ精神が揺さぶられていた。しかし、グレミー・トトへの依存が強すぎだな。そのせいで戦う選択肢が取れなかった。
「……それにしてもジオン兵ってのは頭は悪いが根性だけはある。それだけは認めてやろう」
プルツーが降ったことで心は折れが折れたグレミーも降ったことで大勢は決した……ように思えたが、反乱軍は軍というには烏合の衆が過ぎている。
ネオ・ジオンから分離した反乱軍のほとんどは抵抗をやめて降参した。これにはパイロットというのは元々末端であり、上層部の意向に逆らえず、仕方なく反乱に加わったという者もいるし、やはり長い間共に戦った同胞と殺し合うのに抵抗があった者もいる。
問題は退くに退けない主導した者達と連邦憎しで集ったジオン残党達だ。
特に武断派代表、グレミー・トトの右腕といえる立場だったラカン・ダカランは退いても地獄、進んでも地獄、ならばと戦って死にたいと武断派らしい結論付け、先のない戦いを繰り広げ、その部下であったスペースウルフ隊も付き従っている。
ジオン残党の中にはもう疲れたと降伏する者達もいるが、そもそもネオ・ジオンがまとまっていた時に合流しないぐらいには反骨精神の強い者達の集まりであるため降伏を選ぶ者達よりも圧倒的に逃走を図る者達が多い。
「ハマーン閣下が追撃の指示を出していないのも大きいだろうがな」
この状況下で1番怖いのは追撃を仕掛けて反撃されることだろう。
やたらと熟練した兵士が多いジオン残党の撤退戦など新米が多いネオ・ジオン軍が痛い目に遭う未来が視える……うん、本当に視えたな。
「しかしサイコ・フレームか、なかなかいい素材ではあるがセキュリティが……アンダーサイコミュと組み合わせれば何とかなるか?いや、そうか……ああすれば……うん、後でまとめておくとしよう――あっ」
マシュマー・セロの乗るザクIII改が爆発した。いつまでも撤退しないから……まぁ重傷のようだがまだ生きているし、戦闘区域から外れて流されているから死ぬことはないだろう。
「1機、マシュマー・セロの回収に向かわせ――いや、前線にいるレナスには生存者の救助させろ」
「了解」
まだ戦闘が完全に終わっていないためネオ・ジオンは救助作業は行われていない。MSなら生産すればいいが兵士はそうはいかないのでこちらで回収して高く売りつけよう。ついでに敵味方の識別もしておけば更に高く売れるだろう。
とはいえ、今回の貸し……支払う能力があるかは疑問だがな。あの試作機だけでも相当な貸しだからな。