第五百六十話
思いついたサイコ・フレームの使い道を具現化してみたのだが――
「なるほど。確かにサイコ・フレームは機材って言うより素材ですからこんな使い方ができますね。でもアレンさんが言っていたセキュリティ面では大丈夫なんですか?サイコ・フレームでサイコミュそのものを作っちゃって」
「一応は問題ないが……このサイコ・フレームは曲者だからな。完璧とは言いづらい」
サイコ・フレーム……というより高性能化したサイコミュそのものが開発者の意図とは違った作用が立て続けに起こっている。
サイコ・フレーム製サイコミュなど何が起こるか私でも予測がつかない。
「とはいえ、私が乗っ取ろうとしても少し時間が必要になったのだから乗っ取られる心配は減ったか」
本気を出せば今までと変わらないが、ミソロギアの運営と並行して乗っ取ろうとすると1機に5秒程度掛かるようになった。
5秒耐えられるなら私が察知して防ぐこともできるだろうし、間に合わなくとも取り返すことも可能だ。そもそも私を上回る存在なら従来のサイコミュを採用したところで防げるものではないので思考しないものとする。ちなみに従来のサイコミュだと3倍程度時間が掛かる。
「このサイコミュはとりあえずサイコミュF型とするか。ジオン系技術で作られたんだからF型と名付けるにはちょうどいいな」
「MS-06Fですか、随分人気ですよね。ガザとかガルスJに乗りながらMS-06Fの方が良かったとか言っている人が未だにいますから」
「……スミレ、外に興味がないから忘れているようだが世界が違うことを自覚しておくように」
この世界でもMS-06Fが人気であることは変わりないが、スミレの話しているのは前の世界での話だ。
「あ、そうでしたね。ここのところ研究ばかりしてましたから忘れてました」
「文字通り世界が変わることなんて普通の人生ではありえないからわからんではないが」
「まぁ私達はいつでもどこでもやることは変わらないんですけどね!」
「それはそうだな」
私達はどこにいても研究をしていればそれでいい人種だからな。過去の積み重ねで重荷(責任)があるが、あってもなくてもそれは変わらない。
「――にしても――眩しいですね」
「異論はない」
サイコミュF型は発光現象の発現のハードルを下げることに成功した。
プルシリーズの上位ナンバー、その中でも感応能力に優れた者達が次々と発言させている――しかし――
「どれも防御壁……バリアばかりで面白みはないがな」
死亡率の低下や機体への負荷が少ないこと、プルシリーズの増長による暴走などがなくていいのだが堅実すぎる。
「やはり、コレの先がハマーン閣下のような別の能力の目覚めとなるのだろうか」
「その可能性は高いです。やはり前の世界のアムロ・レイを捕まえたかったですねぇ」
「仕方ないさ。しかし、この世界には2人もアムロ・レイがいる。どちらかを確保できるように動いてみるか」