第五百六十一話
とりあえずサイコミュF型はMSに採用する前に試験的にマスタールームのサイコミュと置き換えすることにした。
サイコミュF型は発光現象という特異性を除いても従来のサイコミュよりも性能が向上している。ついでに壁もサイコ・フレームで構築し直すことにした。
MSに搭載するには装甲と同化するように内側に配されているアンダーサイコミュをサイコミュF型へと置き換えしたいところだが、あいにく旧来のものより小さくなったとは言え、キュベレイ・ストラティオティスに搭載するには少し大きく、改めて再設計しないといけないのでサイコミュF型を改良するか次世代機に託す形になる。
「しかし置き換え作業にはしばらく掛かるか」
サイコ・フレームは小規模生産なら問題なかったが量を作るとなるそれ相応のレーンを構えないといけない。
MSに搭載するならともかく、急ぎではないマスタールームのアップデートなどにリソースを多く割くのは無駄というものだ。
とはいえ、置き換えるサイコミュはミソロギア2とコンペイトウに設置することを考えると、新たに旧式のサイコミュを生産するというのもどうかと思う。資源コスト的にはそれほど変わらないのだからなおさら。
しかし、さすがにあのサイズのものを手作業(厳密には超小型触手)で作るのは私でも骨が折れる。
あの試作機のサイコ・フレームはなんとか作ったがサイコミュF型は小型の生産機を作ったぐらいだからな。
「いやしかし、サイコ・フレームそのものを改良する余地もまだまだあるからな。そんな不完全なものを大量生産を行うのは手間だ……しかし……ハァ、やりたいこと、やらなければならないことが多すぎる」
サイコミュF型によって私のキャパシティは増えたが、それ以上に作業が増えては効果が薄いな。
……上位ナンバーも随分成長したからそろそろ本格的に後進教育を任せて、人形の数を減らすか?そうなると私への依存度に差が生まれてしまうからトラブルの元になりかねんが……。
「――ちっ、忙しいというのに往生際の悪い奴らだ」
監視していた反乱軍残党がグレミー・トトを救出しようと動こうと計画を立てているのを察知した。
ここからグレミー・トトの挽回はないことぐらい想像できないか?……できないから計画を立てているのか。ハァ。
「グレミー・トトも救出を期待しているあたりよほど信頼しているようだな」
まぁこんな小規模のトラブルでは私の利にならないのでハマーン閣下に言って早々に潰してもらうとしよう。
もう少し規模が大きくなって肉薄できるなら見過ごしてもよかったのだがな。