第五百六十四話
「なぜいつもはお役所仕事な連邦は今回に限って決断力と行動力をみせるのか」
ネオ・ジオンが動ける状態にない今だからこそ、なのだろうが……まさか会議当日に命令を出し、3日で部隊を整えるとは。
上位ナンバーが当日中に編成案を上げてこなければ、母艦級にMS生産設備がなければ、増援が間に合わなかった。
攻めは入念に、守りは迅速に、ということか。敵が愚かな巨大な組織ならば特に。
「我々が未知の組織であることも要因ではあるだろうが、それにしても軽挙が過ぎるな」
差し向けてくるのはミデア6隻とZガンダムの派生機が12機、アッシマーが24機。
確かZガンダムの派生機は変形機構の難しさからこの世界でも少数生産の精鋭機だったはず、そのカードを切るというのは、次が決まっているからか、それともカードの重要性を理解していないか、もしくは私達を軽く見ているか。答えは全部だ。
しかし、ペガサス級が出てこないのはおそらくシルメリアを相手では守れないと判断、ネオ・ジオンとの対立前に失うのは痛いということで使い捨てにしても痛くないミデアで編成されていた。
ミデアの中身はジェガン3機、つまり18機が搭載されている。火力支援と地上制圧を主として両肩にジムIIIから流用したミサイル・ポッドが装備され、SFS未搭載であることからこちらとしては戦力として数えるに値しない。
さらに言えばこの戦力が本命というだけであって他の資源採掘基地の周辺では連邦軍が不自然に演習が行われている。簡単に言えば牽制だ。
これによって戦力の一点集中させて効率のよい防衛が不可能となった。
ただし、連邦軍が把握している基地を掴めたのは大きい。
10箇所中6箇所がバレているようだが4箇所はバレていないようだ。
「しかし……これで片手間の戦力だというのだからさすが堕ちても地球連邦軍だ」
時間を与えれば地力の差でネオ・ジオンが不利になる。グレミー・トトはどこまで考えていたかは興味ないが反乱軍の決起のタイミングは間違っていないし、地球連邦の停滞と弱体を狙うならコロニー落としも間違っていなかったな。もっとも地球連邦を過小評価していて、地球を支配できるなどという甘いものだったので短期的にはともかく長期的には絶対叶わないがな。
「さて、到着まであと5時間……いや、戦闘前に補給の予定があったか、8時間後か、歓迎の準備はプル達は上手く歓迎できるかな」
今回はプル達に全権を委任することにした。
地上に降りているプル達は既に基地から離れ、活動しているのは私の人形のみ。被害が出たところで集積した物資とシルメリアのみで済むのでここまで任せることにした。