第五百六十六話
「……攻撃してきませんね。数が多すぎたでしょうか」
「通信で上に判断を仰いでいるみたいですね」
「予想の範疇だな」
ミノフスキー粒子の散布は攻撃行動と等しいため、現状両軍行っていない。
先に仕掛けられないミソロギアだが、連邦軍も基地の破壊が目的であるため、ここでの戦闘をしてしまえば勝敗に関係なく、基地の破壊は難しくなる。
加えて基地破壊のために空戦能力に乏しい火力を増強したジェガンが多く、今空中戦を行えば不利な戦いとなるため戦闘は避けたいところ。
つまり、今、連邦軍から攻撃を仕掛けるのはメリットはないのだ。
「では計画通り挑発行動に移れ」
「了解」
ミソロギアとしては基地へ辿り着く前に手を出させたいので挑発するのだが――シルメリアがMS形態になり――中指を立てたり、2機が身を寄せ合ってひそひそ話をしたり(しているように見える)、プークスクスと嘲笑った(ように見える)り、ジークンドーの生みの親の有名シーンのように指をクイクイッと曲げたりとやっていることは子供じみている。
この挑発行動に関してもプルシリーズが考えたものだからなのだが……規律を重んじる正規軍人にこんな挑発に乗るわけがない。通常なら。
しかし、現実は思った以上に効果があった。
強化人間人格OSとサイコミュで操縦されているMDはプルシリーズの思いが反映されるため、普通のMS以上に人間らしく見え、そしてその内容の幼稚さが合わさって絶妙に苛立たせた。
だからといって引き金を引かせるには至らなかったが。
「しかし、警告ぐらいは出すものだと思っていたが……この状態でも進み続けるだけか」
現在、シルメリアは連邦軍を完全に包囲した状態で航行中である。
「この包囲されている状態から戦うなんて無謀もいいところですけど」