第五百六十七話
『人とは他者に対してはどこまでも残虐になり、権力を持てば凡夫は愚者とするのはどこの世界でも同じだと改めて実感した』
そう告げるのはアレンである。
そしてこの場にいるのは――
「我らを愚弄するか!」
「激高したところでこれはビデオレター。血圧を上げるだけで利はありませんよ」
「わかっておるわ!」
「それに擁護するわけではないが今回の指揮はあまりにも酷い」
連邦の奇襲部隊……奇襲になっていないが……はそのまま基地までシルメリアに包囲されたまま進んだ。
そして――まるで奇襲がシルメリアが目に入っていないかのようにミデアから降下を始めるジェガンとその降下を支援しようとする哀れなΖガンダム……正しくは大気圏運用を想定されたΖプラスA型とアッシマーが包囲状態から戦闘を始めた。
戦闘内容は語るまでもなく蹂躙。
ΖプラスA型とアッシマーは全方位からシルメリアに攻撃され、降下するジェガンは基地に集められた一年戦争の負の遺産を利用して作り上げられた対空砲(MSの腕のみでマシンガンやバズーカ、ビームライフル装備の砲台)が迎撃されて瞬く間に壊滅。
「だから言ったのだ。新米の少将に任せるなどありえぬ!」
「ふん、お前とて将官になったのは2年前で戦場も知らんだろうが」
愚かな行動の理由は、ジオン公国、デラーズ・フリート、ティターンズとエゥーゴ、それらと戦ってなお腐っている連邦軍上層部にある。
エゥーゴとティターンズが相打ちし、未来のアムロ・レイという存在を手にしたことで軍の再編成を始めるほどの欲と余裕が生まれたわけだが、欲と余裕が生まれた組織は何をするか……そう、派閥争いである。
ネオ・ジオンが本格的に地球を占領し始めていたならまとまっただろう。しかしネオ・ジオンは宇宙に留まり、内乱が起こり弱体化してしまった。
そして危機は去った……と軽く見た者達が多くいた。その結果、指揮権の奪い合いが発生。真っ当な者達は相応の者を推薦したが、こういう派閥争いは真っ当な者よりも不当な者達の方が上回るのは当然だ。元々勝率が高いからこそ不当に手を出す者が多いのだから。
しかし、不当に手を出した者達は基本的に能力が低いという欠点があり、採用された指揮官は無能だったのだ。
『あまりにも無謀無策の所業故に慈悲として全員捕虜とした。返して欲しいならこちらの要求を飲んでもらう』
「賊風情が要求だと?!這いつくばって願うのはそちらだろうが!」
「しかし、今は兵士が少しでも必要な時。話を聞いてからでも遅くはないでしょう」