第五百七十話
「これでやっと無駄飯食いから解放されるんだな」
「長かったですねー。まぁ外の人間を知るにはいい機会だったと思いましょう」
母艦級の中でプルシリーズ同士の会話である。
現在この母艦にはコンペイトウにいた捕虜達が全員乗せられている。
目的地は捕虜交換のために用意された簡易コロニーだ。
「絆されてる子達もいるけど大丈夫かなぁ」
「そのあたりは父様がケアしてくれるでしょ。……あ、でも最近教育方針を変えてるから報告しておくわ」
「いきなり方針が変わってちょっと不安になってる子も多いよね。特に若い妹達に」
「確かに。動揺しているところに更に追い打ちとなると……上位ナンバーに様子を見るように頼んでみましょうか」
「それがいいね。じゃあ任せた」
「ハァ、姉役は大変ですね」
なんて駄弁っていても問題ないぐらいには順調に、地球連邦軍やネオ・ジオンからの妨害を受けることなく、スケジュールを消化していき、簡易コロニーに到着した。
「でも調印式が終わるまでは捕虜の管理は私達のお仕事なんだよねー」
地球連邦に任せるわけにはいかないのはもちろん、ネオ・ジオンに任せるのも反乱軍残党やそもそも地球連邦を恨んでいる者が多いのだから捕虜をどう扱うかわからない。いや、連邦への恨みだけでなく、ミソロギアに対して面白くない感情をもっている者も多くいるのでミソロギアの汚点とするために行われる可能性も大いにある。
だからミソロギアが引き渡しまで行うこととなっている。
「自軍が信用できないなんてこの世界のハマーンは大変だー」
「まぁお父様がいないとこの程度かもしれませんね」
「腐敗しているけど組織としてはやっぱり連邦の方が1枚上手だもんねー」
「でもこの調印でネオ・ジオンは地球連邦と対等の組織になれるんだけらちょっとは変わるかな?」
捕虜交換を公に行うことは即ち、それだけの組織だということを地球連邦に認めさせたことになる。
これはジオン公国と並ぶ……いや、公的には戦争状態ではない現状で対等だと示せたということはジオン公国を上回る組織となるだろう。