第五百七十一話
「やっぱりスマートには済まなかったねー」
「全く、連邦もろくなことをしない」
呑気なプルシリーズの会話とは裏腹に、部屋は死屍累々。働き過ぎて生きる屍になっているのではなく本物の屍が漂っていた。
「煽られて軽率な行動をするネオ・ジオン兵も馬鹿だよねー」
「地球でなら億が一の可能性があるかもですけど宇宙で兆でもありえませんよねぇ」
「連邦兵に並々ならぬ恨みがあるのは理解できますが、このタイミングで捕虜を殺そうとするなんて……しかも正面から挑んでくるなんて」
「無謀過ぎて笑う気にもなれません。せめてMSぐらいは用意すればいいものを」
「それだと私達に辿り着く前に身内にやっつけられちゃうんじゃない?」
「その程度の腕前なら大人しく泣き寝入りしてろっての」
「とりあえずこれで連邦の陰謀は潰えたかな」
「開戦理由に捕虜虐殺させようって人の命を何だと思ってるんすかねー」
「クローンな私達が言っても説得力は皆無だがな」
「おっと、こりゃ一本取られたっす」
「でも皆殺しで良かったの?捕まえようと思えばできたよ?」
「父さんとハマーン閣下の話し合いで私達に絡む者達は始末する方針となった」
「ありゃ?パパがモルモットにしないなんて珍しいね」
「今はモルモットとして使うより食料の備蓄を進めたいと言っていたな」
「あ、そういえばコンペイトウの運営に人数が足りないんだっけ」
「だからモルモットより姉妹を優先ってこと」
「でもそれはパパの理由だよね。ハマーン閣下は随分思い切ったね」
「生け捕りにすると処理が面倒でいい加減うんざりと愚痴っていたようだな」
「上に立つ者の務めってやつだね。他と比べると統一されている私達でも苦労するもんね」
「まぁ、私達の場合は家族意識もあるから甘えている部分も少なからずあるだろう」
「あー、確かに私もついついやってくれる人に頼っちゃったりするからねー」
自分のしたいことを優先するほど社会は秩序を乱れやすい。
己の義務を全うしてからしたいことをする。当たり前のことではあるが、全ての人間にそれを求めるというのは現実的ではない。
そもそもミソロギアは自分のしたいことを優先する代表と言える人種が代表をしているのだからとやかく言えた話ではない。
「とりま、ゴミ掃除するとしましょうか」
「連邦の人達が来ちゃったら驚いちゃいますからね。痕跡を残さぬように」
「完全犯罪成し遂げるのですー」