第五百七十二話
「これは直接的過ぎて美しくありませんわね」
そう言って見事な悪役令嬢的縦ロールな髪型のプルシリーズが扇を開いたその上に乗せている物体をゆるふわボブカットのプルシリーズに放り投げた。
「連邦はもっと上手い相手だと思っていたのですけど……ダメダメですわね」
その放り投げられた物体を同じように扇で受け取り、再び投げ返し――
「何で遊んでる!!」
「イタッ!!」
「ゲフッ?!」
宙を漂う物体を触手で確保しながら2人の鳩尾を強打する上位ナンバー。
「いくら無力化しているとはいえ爆弾を投げて遊ばない!」
「「ごめんなさい」」
連邦が仕掛けたことは単純で、爆弾テロ。しかも、爆弾そのものは対して威力はなく、至近距離じゃないと死ぬことはない程度のものになっていて、ダメージを与えるものではなく、あくまで戦端を開くためだけの仕掛けである。
「サイコミュが更新されてなかったら危なかったですね」
今回の捕虜交換もアレンはプルシリーズに任せることとした。
主導はネオ・ジオンであるし、失敗したところで最悪が戦争の開始でしかないため大した問題にならないという判断である。
しかし、自分達に被害が出るのは不本意であるし、うっかりが過ぎてミソロギアの評価が下がることは時渡りでもしない限りはデメリットしかない。
そのためアレンが関与しないこと代わりに保険として母艦級のサイコミュはF型に更新されている。
それにより未来予測システムの精度が向上したことで、今までよりも自分達の危機以外のこともある程度予測することができるようになった。
もしこれが更新されなければプルシリーズにとって持った状態で爆発しても致死量ではない爆弾など予測できなかっただろう。
「さて、ハマーン閣下に報告しておくか」
「そういえば無断でやってしまいましたけど問題にならないかしら」
「説明も根拠も示せないから仕方ありません」
「今回のことはなかったことにされるんでしょうねぇ」
連邦は爆弾テロなど認めないだろうし、ネオ・ジオンにとっても今波風立てるには連戦するにしてももう少し時間が欲しいところである。
「まぁ釘を刺す程度には役に立つかもしれないな」
「むしろハマーン閣下の胃へのダメージの方が大きい気がしますわね」
「ある意味ネオ・ジオンにとって1番痛いところを突いたものかもしれません」
「大丈夫。アレン様特製胃薬が渡されているから耐えられるわ」
「身体的なものと精神的なものは別だと思うんです」