第五百七十七話
とりあえず重要度の高いゲート以外は防衛用戦力として高機動型、標準レナス、カヴリ(火力支援型MD)を各5体ずつ、警備兼白兵戦用戦力に私の人形を10体配置することにした。
ミソロギア1、オイコスの定数到達までは年単位で掛かる予定であるため、近いうちに各ゲートから中央に向けてリニアトレインを敷いて物資輸送の効率化も兼ねるか、中間辺りにコントロールルームを作り、そこでゲートの管理を行うか検討中だ。
簡単なのはコントロールルームを設置することだが、それではMDは操縦できても有人機を運用することができないため、対処の幅が狭まってしまう。
リニアトレインを敷くのは物資輸送が容易くなるし、ゲートで滞在する必要面倒が少なくなるというメリットはあるが通路の拡張工事にはコントロールルームの設置よりも時間が掛かってしまう。
どちらも一長一短があって難しい。
「こちらも問題だな」
オイコスに移住させるための人選をプルシリーズに頼んだのだが……これは間違いだった。
プルシリーズが取った行動は個人の裁量に任せた志願制だった。
しかし、プルシリーズはニュータイプであり、姉妹であろうと所詮は未熟な人間でしかないということなのか、人間というのは慣れた場所から離れるのに抵抗があるもので、プルシリーズも例外ではないことを理解しなかったようだ。
志願したのはほとんどが生まれてからあまり時が経っていない若いプルシリーズばかりで、中位ナンバー以上は志願していない。
「オイコス(家)と名付けたくせに家にはしたくないようだ……ミソロギア(神話)の住人に家は不要か?」
とはいえ、プルシリーズに任せると言った以上は要請があるまでは私が手を貸すことはしないでおくつもりだ。
介入することで移住そのものの問題は解消できるだろうが、任せたことをすぐに取り上げることや強制移住をさせてしまえば両方から私に対して不満を持たれてしまう。もちろんそんなことで反抗的になったりするほど軟な躾はしていないが、積み重ねることで反抗心を育ててしまうことになりかねない。
何より責任感を育てるために最後までやり遂げてもらう。
ミソロギア1、2、オイコス、将来的には手放すが資源採取基地10箇所、新型母艦級5隻と勢力拡大をしたことで役職も責任も増えてきたので兵士や実験体という枠から外れた成長を期待する。
「こっちはこっちで何を考えているのやら」
捕虜交換へのテロ行為が失敗した連邦はなぜか私達の採取拠点に対して攻撃を仕掛けてきた。
ただし、今回の攻撃はMSではなく生身の人間によるもので、主に情報収集を重点的に行い、隙があれば破壊工作を行う。
どうやらMS戦では損害が出すぎると判断したようで、戦い方を変えたようだ。
しかも、今回の指揮する人間は命令されたわけではなく、上官の愚痴を忖度したという職権乱用甚だしいことが発端となっている。
こちらの対処もプルシリーズに任せたので近日中には報告が来るだろう。