第五百七十九話
「サイコフレームの成果は上々ではあるが――」
連邦も面倒なことをしてくれる。
採集基地はそれほど重要度が高いわけではないが、低いわけでもない。
特殊部隊だけならそろそろ見過ごすことができないほどの数を始末した。しかし、問題はそこらの歩兵部隊が多いことだ。
これを指揮している人間は歩兵など書類上にある数字でしか見ていないのだろう。いくら歩兵が1番安い兵士であるとは言ってもただただ無駄死にさせるとは……私だったらしばらく信じもしない神に懺悔ぐらいはしてもいいぐらいには愚かな行為だ。
しかし、捕虜にするとまた私達の物資を食いつぶす虫が寄生することになる……しかも今は情勢が落ち着いているため、おそらくこの前のMS戦もあって交渉のテーブルにはつかずに、知らぬ存ぜぬで随分と訓練され、武装が正規軍の賊というトカゲの尻尾切りだろう。
一応ドッグタグと全ての指と毛髪を丁寧に梱包して送りつけてやったが……無能は無能、全員狩られたならこちらにも相応の被害が出ていて、その仕返しにこのような嫌がらせをしてきているのだ、と宣っている。
指を送っているのは別に嫌がらせや恐怖を煽る、挑発行為などではなく、ただ単に本人確認がし易いだろうという私なりの心配りなのだがな。網膜も送ろうかと思ったがそのためには保存が面倒だったから諦めた。
ちなみに被害の実情は戦死者どころか軽傷者すらいない。もっとも大きな被害で銃弾で髪が切れたというものだ。
無能で働き者の味方こそが真の敵というのは間違いない。
「歩兵による防衛戦の実戦訓練と思えば悪いことだけでもないが」
歩兵の防衛用のドクトリンや戦術などはデータとして存在するが実戦経験などあるはずがない。それに常人を前提に作られたものがプルシリーズを主体としている私達に合うわけもない。
事実として防衛なら1部隊を1人のプルシリーズでどうとでもなる。これが攻撃側なら話は変わるが。
攻撃とは流動し、地の利を手放す。そうすると情報伝達が遅れ、連携が疎かになり、何よりこちらが好きなタイミングで襲撃することができる。
逆に潜入ならともかく防衛されているのを抜くとなると狭い通路や爆発物を多用されることになると身体能力が優れていてもプルシリーズでは手間取ってしまう。