第五百八十一話
ミソロギアの日常編。
「おおー、南国の島がここにある」
「前までは映像だったのに植物が本物だよ!」
地球を観光したプルシリーズの要望によりミソロギア1にあったリゾート区画がよりリアルに再現されている。
これも地球にある資源採取基地の成果の1つである。
「ヤシガニまでい――あー!!指が切断された?!」
「バカ!!鋏に指を出し入れして遊んでるからそんなことになるのよ!カプセルに行ってきな!」
叱りはすれど慌てはしない。
プルシリーズにとってこの程度の負傷は日常であるのだから。
どちらかというと強化されている自分達の指を切断されたことの方に驚いているぐらいだ。
「ええー?!せっかく順番が回ってきたのに!!こんなの救急キットで止血してこのままでいいよ!!」
「この愚か者をとっととつまみ出せ」
「いや~私のバカンスが~」
「むしろあんたの世話をすることになって私の休暇が減ったんだけど?」
「それはゴメンだけど~」
と言い争いながら退場していった。
「バカンスというよりバカッスね!」
「そのとおりだ……で、そのヤシガニを茹でようとするな。食用とする許可が出ていない」
「えー、美味しそうなのに」
「美味しそうか?」
「え?美味しそうじゃない?だってカニだし」
「加工される前のこれをそうとは思えないな。とりあえずその鍋は片付けてこい」
「は~い。……あ、ヒトデだ」(チラッ)
「……よくそれを見て食べようと思うな。そもそもヒトデって食べられるのか?」
「わかんない」
「知らないのに食べようとしたのか、さすがトラフグの丸揚げを食べようとした強者(つわもの)だな」
「それほどでもー」
褒めてないことはないが完全に褒めてはないことに気づきながらも能天気系のプルシリーズ(エルピー・プル系)は些細なことは気にしない。
「ところでなんで遊びに来てるのに競泳水着なんです?」
ストイック系プルシリーズ(プルツー系)の出で立ちにツッコミを入れる。
「? 泳ぐのに適した格好だろう?」
「せっかくなんだから可愛い水着にしたらいいのに」
「そういうのはアレン父上がいる時だけでいいだろう」
「もしかしなくても上位ナンバーの方?」
「? そうだが?」
姉妹だからと言って相手のナンバーを覚えているわけではない。
しかし上位ナンバーは……正確には中位ナンバーの上位からはある特徴がある。
それは――アレンのことが親としてではなく異性として好きだということだ。
プルシリーズも随分と年齢を積み重ね、男よりも早く異性を意識し始める女であるため、既に異性を意識し始める年齢に入っている。故に忠誠度だけではない熱があり、若い個体はそれらを特徴と捉えている。
もっともそれとは関係なく、ストイック系は大体競泳水着である事実は変わらないが。
「とはいえ、アレン父上に色仕掛けなど通用するわけもないのだが」
「私達の身体なんて遺伝子レベルで知り尽くしてますから今更ですよね」
「そうだな。それに私達では大きく体系は変わらないし、な」
「アレンパパに頼めば……って、それじゃ微妙ですよね」
「ああ……ハマーンが羨ましい限りだ」
「でも進展がないって聞いたんだけど」
「それはアレン父上が私達に配慮してのことだ。ここでハマーンを特別扱いしてはミソロギアが分裂してしまうかもしれないからな」
「肝心のアレンパパの気持ちはどうなんでしょうね」
「……そもそも男女の仲に興味があるのかすらわからんからな」