第五百八十四話
『あの機体には及ばんが――悪くないっ』
「それはよかった」
サイコミュを渡すと機密の関係で面倒になる。ならば別のものにすればいいということで――
「クィン・マンサの8割サイコフレームに置き換えれば多少は操作性がよくなって当然だ」
サイコフレームは今や連邦もネオ・ジオンも保有する技術なのだから漏洩を心配する必要はない。
ただ、ネオ・ジオンにはこれだけのサイコフレームを製造する資金も資源も設備も余裕もないことから視野に入れていなかったようだ。
その点私達はオイコスには相応に生産設備があり、リソースが増え、資源そのものも地球から手に入ってるし、宇宙資源は潤沢にある。まぁもっとあってもいいが。
1番ないのは余裕だが、サイコフレームの製造はサイコミュF型の材料として増産しているので予定を変更しなくてはならないが、万全が遠のきはするが現状の戦力でも私達の脅威となる戦力はこの世界には存在しない。
何かを起こせる可能性があるのはこのクィン・マンサを操るハマーン閣下とこの世界のシャアとフル・フロンタル、アムロ・レイ2人が全員組んでくることぐらいだが情勢を考えればせいぜいが3人と2人なので問題にならない。
というわけでサイコフレームを提供したわけだ。
もちろん対価はいただく――予定ではあるがいつ回収できるのかはわからんが。
「しかし、サイコフレームはまだ未知の素材だ。万が一があっても責任は取れない」
別の世界から来たアムロ達という前例がある。しかも奴らの機体にはサイコフレームはごく一部しか使用していなかったと聞いている。
ほぼサイコフレームでできているクィン・マンサと私が組み立てた訓練メニューを熟して能力を伸ばしているハマーン閣下が揃えば同じく時渡りを起こすことは十分にありえる。
さすがに私も時渡りをされては回収はできない……と思う。多分。私自身の能力は私自身でも未知な部分が多いからはっきりと言えないが、そんな未知を信用するなど愚かだ。
『その時はその時だ』
組織を率いる者としてそれはどうなんだ。戦闘時ですらパイロットスーツを着ないことといい自殺願望が強いのか。
ハマーン閣下がいなくなったら私達も時渡りをするか私達を従属させようとネオ・ジオンや連邦を捻り潰して居座るかの選択を迫られるのだが……まぁその時はその時に考えればいいか。
「それと先に注意したが機体強度そのものは落ちているので気をつけろ」
重量比で考えれば強度が優れているのは事実だが、それでも今までの装甲材よりは劣るのだ。
あの発光現象のバリアのようなものを発生させることができるならまた話は別だがな。
『当たらなければどうということはない』
「何処かの仮面が言ってそうなセリフだな」
『よく分かるな。言っていた記録があるぞ』
どうやら思っていた以上にハマーン閣下はシャアの影響を受けているようだ。
開設2007/4/16 リニューアル2010/11/10