第五百九十八話
アーガマとカラバが合流したことで連邦に新たな動きがあった。
まだ本決まりではないがアーガマをロンド・ベルという特殊部隊することで連邦傘下であることを改めて明示する案が出た。
エゥーゴは連邦内の組織となっていたが、ティターンズとは違い公的には派閥ではあっても組織ではなく、レジスタンス扱いだ。
そのレジスタンスを罰することなく、取り込もうという1手だ。
なぜこのタイミングで話が出てきたかと言うとエゥーゴだけでは既に取り込むほどの価値はなく、だからと言って処分するには抵抗されれば被害が大きくなると判断されて放置されていた。
しかし、カラバが合流したことでその価値が大幅に上昇、それにより急ぎ取り込みを図ったわけだ。提示予定の条件は所属することのみ。逆に言えば、兵站も何もない代わりに所属するだけで派閥も私兵と化しているアーガマもそのままで給料だけは貰えるという破格な待遇だ。
まぁ取り込みと言いつつ内部分裂を誘う1手でもあるのだがな。傘下に入るということは軍門に下るということにほかならないが、待遇が良くなれば靡く者もいるのは当然で、それに嫉妬や裏切りと受け取る者達がいるのもまた同じ。
そしてその話でエゥーゴとカラバを拘束している間に――
「ネオ・ジオンにニュータイプ狩りを擦り付けて討伐の準備か……今考えると前の世界は上手く正常化できていたのか。まだまだ淀んでいたのは事実だが、この世界の連邦よりは澄んでいる」
もっともこの世界より強いネオ・ジオンが、そして私達が存在したから、淀んだままではいられなかったとも言えるが。
そういう意味ではこの世界も後1歩で正常化ができそうではあるが……せめてクワトロ・バジーナの心が折れていなければ……いや、そうか、ナタリー・ビアンキがいないから。今のやつには家族はいない。本当に欲しているのは権力でも復讐でもなく家族だからな。本人は気付いていないが。
正直ハマーン閣下では難しいだろう。連邦は古い時代の産物、女であるハマーン閣下はネオ・ジオンとして武で渡り合うことはできても外交では上手くいかないはずだ。連邦の政治家は8割が男で構成されている男性社会なのだから。
内乱前の状態の3倍ほどの戦力があれば、なんとかなったかもしれないが……トドメは未来からの来訪者というイレギュラーも向かい風となった。
「ハマーン閣下には情報は渡したが、勝てるかどうか」
パイロット不足のために学生を徴兵、つまり学徒兵まで投入することを決定した。ジオン公国と同じ道を歩んでいることを自覚しながらもそうせねばならないとハマーン閣下は決断した。
更にMSの製造を依頼された。もちろん対価は十分に頂いたので武装もシンプルで機体バランスも良く新米でも扱いやすい量産型バウを生産中だ。
「ただ、タイミングが悪かったな」
MSの製造そのものはしていないが、残念ながらミソロギアの製造設備はオイコスを整えるためにほぼ埋まっていたため高くついたな。