第六百四話
カミーユ・ビダンの治療によって生まれる疲労は思った以上に時を加速させる効果があり、1ヶ月が経過した。
その間にジュドー・アーシタとビーチャ・オーグレは拳で語らい、和解。そしてミソロギアに所属することを決めた……が正直に言えば不安要素でしかない。
前の世界のジュドー達は大人となり、前科がつき、未来が明るいものではないという状況だったので私が拾い上げたことに感謝する気持ちがあるし、帰属意識もある。トドメに時渡りによって前科はなくなったが自分自身以外全てがなくなって逃げ場もなくなった。
しかし、ジュドー・アーシタ達はまだ未来に夢を見る子供、無謀と無茶で道理が引っ込み、明るい明日が必ず来ると思っている年頃だ。
所属します、と言ってそれを信用するつもりはない。今はそう思っていても明日はどうかわからない。
ジュドー・アーシタ兄妹やエル・ビアンノほど義理堅さを持ち合わせていないのだから。
なので重要ではなく、誰でもやれるような仕事を色々とやらせて様子見をすることとした。
良くも悪くも子供であるから色々経験をさせておくとしよう。
本当は肉体的老化とは無縁な私達は不測の事態などなければ時間は自由が効くのでそんな短期間に色々させる必要はないのだが、まだ不老化や肉体強化を施しておらず、心変わりして去っていくことを想定してのことだ。
「連邦が動くのは20日後か」
ネオ・ジオン討伐軍が最終調整に入った。
ニュータイプの育成で成績の良い上澄みの200名を徴兵し、より実戦的な訓練……具体的には今まで隠していた新型MSの実機を解禁したようだ。
それによって私の方にも情報が手に入ってきたが――
「焼き直し、といえばそれまでだが連邦も思い切ったものを作ったな」
ファンネル適性が低いが操縦技術に優れている者にはファンネルではなくインコムを採用している量産型νガンダム。
ファンネル適性が高く、可変機の適性も高い者にはデルタガンダムにフィン・ファンネルを搭載したデルタカイ。(原作と違ってフィン・ファンネルはνガンダムと同一、)
ファンネル適性が高く、射撃能力が高い者にはその圧倒的火力故に優先的に狙われる可能性を考慮しての防御と自衛火力としてフィン・ファンネルを搭載されたΖΖの後継機というのかニュータイプ専用型というべきか、ν-ΖΖ。
ファンネル適性なく、操縦技術に優れた者にはジェガンをチューンし、νガンダムと同等まで引き上げたジェスタという機体がパイロットの適性にあったオプションとしてキャノンや高速起動型、狙撃型などが用意され、中にはファンネル適性と操縦技術に優れた者にはフィン・ファンネル装備もあるようだ。(ロズウェル・ジェガンをジェスタで作った)
これらの機体全てにサイコ・フレームが多く使われているので戦闘となれば何か起こるかもしれないと期待してしまう。
他にもガンダムシリーズが開発中だという話があるが、それは今回の戦いでは間に合わなかったようだ。ならばとプル達に潜入させようと思ったのだが、どうやら相当自信があるようで念入りに隠蔽されていて見つけられない。
どうも私がニュータイプ研究所を定期的に観測していることを研究所にいるニュータイプ達に感知され、定期的に視られていると研究員に告げたことで得体のしれないニュータイプ(私)が監視している可能性に至ったことで私への対策も施し、それが効いている。
元々ここから地球のオールドタイプを感じ取るのは骨が折れるというのに、更にはパイロットに選ばれた者は必要がない時は眠らすことで感じることができなくなり、しかも場所を移動しているのでせっかくオールドタイプの研究者をマークしても一々探す必要がある。ニュータイプなら移動してもすぐわかるがオールドタイプは大きく移動されると個人を探すのに時間が掛かる。(感覚的には無数の蟻が有象無象のオールドタイプ、中で羽が生えたり大きかったりするのがニュータイプ、無数にいる蟻にほんのり色をつけたのがマークしたオールドタイプという感じ)
「本命を知ることができないのは残念だが、オールドタイプ向けのデルタカイには興味深いシステムが搭載されているようだし、妥協するとしよう」