第六百九話
「これがニュータイプの力か」
新兵を戦場に投入するなど何を考えているのか、我が地球連邦はそこまで腐ったか。そう思っていたが――
「これで新米ってんなら期待しちまうのもわからんでもない。機体が特注ってことを差し引いてもな」
新米のフォローを任された時は上官の額を撃ち抜いてやろうかと、シミュレータでの成績を見たらやっぱり楽に殺さず拷問してから殺るべきだと思い直したが、今はそんな気持ち薄れた。(なくなったとは言ってない)
「にしてもシミュレータでの成績と実戦での動きが逆なのは違和感があるが」
シミュレータで成績が良かった奴ほど今は動きがぎこちなく、成績が悪かった奴ほど今はよく動く傾向が強いように見える。これがニュータイプの特徴なのか?
「……これが新しい戦場なのかね」
縦横無尽に動き回る小さい影……ファンネルだったかフィン・ファンネルだったかインコムだったか、が飛び交い、一転して自機や味方にフィン・ファンネルがバリアを形成して守りを固める。たまにファンネル同士がぶつかっているのは御愛嬌としておくとしよう。
戦局はこちらが優勢、そもそも数は上回っているのだから当然……と言いたいところだが、今まで問題だったパイロットとの質の差も随分と埋まっていることが要因だな。(まだ上回ってはいない)
にしてもバウとかいう高性能機が量産されて配備されていることには驚いたが、盾に内蔵されているメガ粒子砲は厄介ではあるがなんとか数で押せている。
「これなら勝てるか?」
今回は政治屋が出しゃばってきたせいで作戦そのものに不信があったがなんとかなりそうだ。
全く、政治屋が従軍するなぞ越権行為甚だしい。
今回の手柄を首相への足がかりにするつもりらしいが、出る杭は打たれるということを知らんのかね。絶対他の政治屋共に足を引っ張られるだろうに。奴らは『特別』を嫌うからな。
「……それはそうと――あれには近づかないようにしよう」
あれは、うん、あっちに任せよう。
俺じゃ……俺達じゃ間違いなく足手まといだ。
広い宇宙には境が存在しない。
しかし、そこには目に見えない境が存在するかのように2機、2人だけの世界が構築されていた。
「随分と様変わりをしたようだな。アムロ・レイ――ッ!」
「撃つ――敵――撃つ――敵は――――撃つッ!!」
明らかに自分の知るアムロ・レイではない様子に嫌悪感を抱くフル・フロンタル。
今まで殺し合ってきた間柄、宿敵といっていい存在だ。
だからこそ――
「知ってはいたが私も醜い存在に成り果てたものだな」
強化人間。
自分も兵士として使っていた。
処置を施すように命令を下しもした。
「アムロ・レイ。君はどうして欲しい。助けてほしいか、それとも――」
――――殺して欲しいか――――