第六百十二話
「俺達、押している……はずだよな」
ネオ・ジオンの奴らも大きく崩れないのはさすがだが、新型達の活躍で押し込んでいる……はずなんだ。
実はこれが計画的な後退で狙いは誘引、挟撃や包囲、コロニーレーザーのような戦術兵器の使用なんかを警戒して戦場全体を見てみたがそれらしい雰囲気はなかった。
もしこれが指示による結果なのだとしてら被害があまりにも、この戦いで決着がつくだろうが、もし万が一にもここから逆転して勝利したところでこれほどの被害を被る作戦を指示したとなれば後処理で内部崩壊するレベルだ。
だからこそ、この戦況は純粋に俺達が優位に立っている。そう理論的には結論が出ている。
「だけどこの違和感はなんだ……いや、そうか、奴らは今までの敵と違うのか」
今まで俺が戦ってきたのはジオン残党とエゥーゴだが、ネオ・ジオンとは明確に異なる点があった。
それはジオン残党はもちろんエゥーゴはテロリストのようなもので形勢が不利なら逃げて姿を隠すことが上等手段だ。
しかし、ネオ・ジオンは罪を犯した組織ではあるし武装もしているがテロリストではない。抵抗はしているから重犯罪者には違いないが……そもそも今回のきっかけとなった地球各地で行われた誘拐事件がネオ・ジオンのものなのかという疑問もある。
ネオ・ジオンが立場を固めるのに大事な時期に誘拐?しかも地球で?コロニーでならともかく、わざわざ仮想敵のテリトリーで誘拐?2000人を超えて?それって俺等(地球連邦)の失態じゃね?って話だ。
それに誘拐被害者を連邦の研究所で見たって話も聞いている……きな臭すぎる。
話を戻すが、つまりネオ・ジオンはここで引いてしまえば公的な組織として終わり他と同様にテロリストとなるか、それこそ終わりだろう。
だからこそ、この中途半端なことになっているのだろう。
一部が押されてそれに合わせられない部隊が取り残されそうになり慌てて下がるがその際に損害を出す。そしてその繰り返しで被害を拡大し続けている。
「まぁ練度の差もありそうだが――今、なにか出撃した――なんだあの速さは――」
ネオ・ジオンの旗艦サダラーンからスラスターの光が見えたと思えば20機の人が耐えられるのか疑問なほどの速度のなにかが見えた。
「あれは――SFSか?!しかもクィン・マンサと他はキュベレイだと?!」