第六百十四話
俗に言う決戦兵器を想定した分厚い防衛網にまっすぐ突っ込むハマーンとプルシリーズ達。
それを迎撃する連邦軍は数こそ多いがジェガンばかり、つまりハマーンの作戦自体は成功している。
しかし、数は100機を超え、普通ならば突破などできるとは思えないし、しようとも思わないが――
「ふん、所詮オールドタイプがこの程度集まったところで――」
クィン・マンサは前傾姿勢から上半身を起こし――
「――我々を止めることなどできはせん」
斉射。
そして斉射。
また斉射。
止まらぬ弾幕。そして消し飛ばされる進路上にいるMS。
「くたばれ!!怪物!!」
無双していれば最優先で狙われることは当然であり、連邦軍の火力はクィン・マンサに集中する。
しかし、その対応は間違いである。
超高速で移動するSFSに対して偏差撃ちをしても当たらず、ビームライフルはIフィールドによって弾かれる。
クィン・マンサがIフィールド発生装置を装備していることはわかっているがあまりの速度に武装選択ができるほどの時間がなかった。
進行方向の敵を集中して殲滅したのはこれにある。
MSが装備する通常仕様の実弾兵器では正面からでなければ追いつけない、当てられない。ハマーン達の速度はそれほど速い。
「くそっ!?第一防衛ライン突破され――げっ!!」
ハマーン達の突破を契機に……正確には戦闘が始まった瞬間からネオ・ジオン軍の反転攻勢が始まったのだ。
特にハマーンの強烈な気配に気を取られたニュータイプ部隊が集中的に狙われた。
これはあらかじめ決められていた作戦で、だからこそ、正面突破なんて無謀なことをするにも関わらずハマーンは気配も隠さないどころか目立つように気を振りまき、ニュータイプの意識を引く。
アレンのトレーニングを地道に熟し、グレミーの反乱によって更に一皮剥けたハマーンの気配は新米のニュータイプに無視できるわけがなかった。
それに加えて優位だからこそ少し余裕があることも災いした。いや、正しくはハマーンの狙い通りでもあったのだが、もしこれが互角だったり劣勢だったりするのなら眼の前の戦いに集中することで気配を無視することもできただろう。
これが新米でもアムロ・レイやカミーユ・ビダンのようなトップクラスのニュータイプだったなら危機的状況に追いやられて覚醒などという逆転もあるかもしれない。
しかし、カツ・コバヤシとそれほど変わらない程度でしかない才能しかない新米達はいくらニュータイプ専用機に乗っていると言っても……いや、精神状態が大きく左右するサイコミュを主軸としているからこそ――
「来るな!来るな!」
「援護を!援護を頼――」
次々と撃破されていくこととなった。
ちなみにハマーンの振りまく気配に随伴しているプルシリーズが一番ビビっていたりするのは余談である。