第六百十五話
「何をしている!火砲を集中させろ!!あの白い化け物さえ落とせば戦いは終わる!周りの艦にも通達――する必要はないようだな」
艦隊のほとんどの主砲、副砲はクィン・マンサに向けられる。
Iフィールドはビームに対して絶大な防御性能を誇る。しかし、それも戦艦のメガ粒子砲を立て続けに受けてしまえば飽和してしまい、貫くことも可能だ。
それに加えて――
「ハマーン・カーン、己を過信しすぎたな。あれだけの速度だ。避けることなどできまい」
MSの強みは速さではない。速さだけなら戦闘機の方が優れ、それからより宇宙に適した形へと進化したMAの方が優れている。
MSとは運動性が強みである。しかし運動性とは速さと共に失われていくものだ。機体スペックもそうだが、1番は人間が耐えられるGではなくなるからだ。
SFSなんてものに乗っている以上、MSではなく戦闘機とそれほど変わらず、戦闘機との戦闘に関しては長い歴史を持つ連邦にとっては容易いことだ。
「愚かな。対策をしてないとでも思っているのか」
ハマーンはプル達に指示を出すとSFSの下部からミサイルが発射され――爆発。
正確には爆発ではなく――
「メガ粒子砲が消失?!攪乱幕か?!」
クィン・マンサとキュベレイではいくらクィン・マンサが軽量化されたとはいえ重量が違う。しかし、同じSFSに1機ずつ乗っているのに同じ速度なのは合わせていたからではなく、キュベレイのSFSにはビーム攪乱幕用ミサイルが搭載されていたから同じ速度となっていただけなのだ。
「もっともこちらの攻撃も届かなくなるので乱用はできないのだが」
クィン・マンサとキュベレイの武装に実弾兵器はないので有効的な武装はビーム・サーベルのみとなる。ちなみにSFSに武装はない。
つまり、今は互いに攻撃できない――わけではない。
「いかん!もう距離が――ビームがダメならミサイルだ!ミサイルで迎撃しろ!」
連邦艦隊にはもちろん実弾兵装があり、Iフィールドの存在を知っている以上はその備えをしているのも当然といえる。
ニュータイプ専用機にしてIフィールド搭載MS対策として威力より超高速迎撃ミサイルが次々と発射される――しかし――それでは間に合わなかった。
「フン、対策があろうことはわかっていてコレを使うわけがないだろうが――既にこの距離は――既に私の間合いだ」