第六百十六話
SFSに搭載できる程度のビーム攪乱幕が戦艦クラスのメガ粒子砲を防ぐほどの濃度を保てるのはそれほど長続きするものではない。何よりSFSの速度では早々に散布範囲を突破――した。
「さて、予定通りだ。任せたぞ」
「「「ハッ!了解しました。マスター」」」
ビーム攪乱幕をばら撒き終わったプル達のSFSは身軽になり、更に速度が上がってハマーンを抜き去り先頭に躍り出て、SFSから離れたキュベレイは連邦軍に襲いかかる。
数では19対80という絶望的な戦力差だ。しかし、それはジオンにとってはいつものことであるし、そのジオンがとった対策が今、集大成として真価を発揮する。
「「「ファンネルッ!」」」
キュベレイからファンネルた射出され、それは弧を描くように展開されていく。
実戦経験と敗北後ハマーンと共に訓練を積み重ね、キュベレイも見た目こそ変化はないが機体スペックは以前より増していることはもちろんのことコクピット周辺はサイコ・フレームが使用されるなど当初にハマーンが要望を出したものを軽く上回っている。
プル達は反乱の時と比べると操縦技術は雲泥の差といえる。それはもちろんファンネルの動きにも反映されている。。
連邦軍も上層部がニュータイプという存在を警戒し、ファンネル対策を講じていたが如何せん準備期間が短く、付け焼き刃でしかなく瞬く間にジェガンをデブリへと変えられていく。
いや、ファンネル対策が仇となっている部分があった。
ファンネル対策はファンネルを意識しつつも操縦者を集中させないようにすることにあるが、そもそもファンネルを装備する機体が複数機、しかも10機を超える数は想定されていない。さら問題としてはその対策で連邦のパイロット達も集中しなくてはならないことである。つまりハマーンを進行阻止、もしくは撃墜をすることが難しくなるということで――
「私もやるとするか――沈めッ!」
射程内に入ったことを確認してバインダーと胸部から放たれたメガ粒子砲は簡単にサラミス3隻を貫通、撃沈させ、腕部メガ粒子砲の連射でジェガンをまとめて焼き払い、防衛網に穴が空き、そのまま速度を落とさずにその穴へと飛び込む。
「さて、肝心の獲物は何処かな」