第六百十七話
「ロ、ロビンズ、カーセッジ、ヴァシュ轟沈!リリントン、アンジーが航行不能!フェアモント、ディロン大破!ロリス、ハーツビル中破!――訂正!ロリス、ディロン轟沈!」
オペレーターの悲鳴としか思えない報告内容は最終防衛ライン、第1、第2はMSなどの機動戦力で構成されていたが、最終防衛ラインはそれに加えて巡洋艦であるサラミス級で構築されていて、そのサラミス級のものである。
「陣を組み直せ!クラップ級を前に出して穴埋めさせろ!」
MSを優先したため数が揃えられなかったが、νガンダムから吸い上げたデータから建造されたクラップ級。
新造艦であるため数合わせと試験運用を兼ねて参加していたが戦力として投入する予定ではなかった。この戦いが終われば艦艇やMSを一新した後に軍縮する予定である。
サラミス級はクラップ級への置き換えが決まっているため人的資源はともかくとして艦艇の消耗自体は痛くはない。
しかし、いくら決戦兵器級とは言ってもたかが1機のMS相手に出していい被害ではなく、何より指揮官の評価が問われることになる。
「進行速度落ちません!このままでは間もなく本艦を有効射程に入ると思われます!」
「ネェル・アーガマはどうした?!アレの主砲ならあの化け物も倒せるはずだ!!」
アレとはハイパー・メガ粒子砲のことである。
言っているとおり、いくらIフィールドが優れているとは言ってもネェル・アーガマのハイパー・メガ粒子砲はコロニーレーザーと同等の威力があるとされているため、期待しても仕方ないだろう。しかし――
「早すぎて照準はまず無理です!それに味方のMS部隊ごと撃つことになります!」
元々ハイパー・メガ粒子砲そのものには旋回性能はなく、MS1機を狙うとすればネェル・アーガマを動かして照準しなければならない。そんなものでMSを狙い撃つなどほぼ不可能に近い。少なくともクィン・マンサに照準を合わせるとなったらネェル・アーガマの船員は大変なことになるだろう。
「ニュータイプ部隊はどうした!!」
「デルタカイが追っていますが追いつけません!」
可変機で機動力の高く、パイロットを強化人間と化したデルタカイが通常の人間ではまず出せない速度で向かってきているがとてもでは追いつけない。
「こうなったら――」
連邦軍の指揮官はある決断を下す。