第六百十九話
「フンッ、他のニュータイプとは違うようだが――私を止められると思っているのか」
とはいえ、相手は量産型νガンダムではあるが、その出で立ちは他とは違っていた。
前が開いている状態のマントのようなものを羽織っているのだ。
ジオンならともかく、連邦がMSに無駄な装飾をするわけもなく、それに意味があるというのはハマーンは理解していた。
正面からでなければパイロットの安全を度外視したSFSの速度で振り切れるが出撃してきたのは正面にいつするクラップ級からだったので突破するにはすれ違う必要がある。
さすがにすれ違うまでに撃破することはニュータイプ同士だと不可能だと判断したハマーンはSFSからクィン・マンサを離脱させる。
Iフィールドがある以上はMS程度のビーム兵器など通用しない。普通の相手ならSFSに乗ったままでも突破できるが――
「ここに来て出てきた敵が普通などありはしないだろう――その札、見せてみろ!!」
クィン・マンサの一斉射が2機を襲う。
『――射出、展開――』
量産型νガンダムのマントが崩れ落ち――その破片がまるで盾になるように機体の前へと立ちふさがり――
「む、このクィン・マンサの攻撃を防ぐか!」
クィン・マンサの攻撃を弾いた。
そして――
『――アタック――』
その破片は盾から矛へと変貌する。
「なるほど、Iフィールド対策か。小賢しいっ!」
――サイコプレート――
それが量産型νガンダムのマントの正体である。
ジオンの最終兵器はIフィールドを採用する可能性が高いと予想し、そして防ぐには既存のMSや戦艦では多大な被害を被ることになることもわかっていた連邦が対策として考えた兵器だ。
サイコガンダムmk-IIのリフレクタービットと軽量かつ高耐久であるサイコ・フレームをかけ合わせて造られたプレートよってビームを弾き、サイコプレートそのもので攻撃することも可能という攻防一体の武装だ。
そしてサイコプレートそのものである以上、Iフィールドで防ぐことはできない。
「その程度の対策でどうにかなると思っているのか!」
しかし、ハマーンはすぐに弱点を見抜き――サイコプレートの側面を殴りつけた。
サイコプレートの攻撃は突き刺すことにあるわけだが逆にいうと突き刺すという性質上、動きは直線的で見切るのも難しくはない。
とはいえ、弱点と言えるのは20を超えるサイコプレートを捌き切れるのは常人に不可能であり、ハマーンだからこそ捌いていると言えた。