第六百二十話
「ちっ、脅威ではないが――面倒な!」
眼の前の敵――量産型νガンダム2機を相手に負けるなど油断を重ねなければ負けることはないとハマーンは所感と変わりない。
しかし、問題はハマーンの目標――ネオ・ジオンの勝利目標、司令官として平和ボケした次期首相の座を狙う政治家を捕らえること。そして何より優先されるのは速さだ。
ハマーンとプルシリーズが中央突破したおかげで戦線は崩れ、ネオ・ジオン軍は立て直すことができたが、そもそもの数が違うためそんなものは一時しのぎにしかならず、立て直しているのは連邦軍も同じだからだ。
だが――
「鬱陶しい板切れがっ!」
サイコプレートは矛であり盾ではあるが、この場においてハマーンにとって厄介なのは盾としての存在だ。
量産型νガンダムの脳達も優先するのはハマーンの撃破ではなく、進行の阻止を優先するように指示されている。
「板切れも無傷というわけではないようだが、な」
いくらサイコプレートがビーム兵器を弾くように設計されているとは言ってもクィン・マンサの高火力を受け続ければ限界が来るのも道理である。
サイコプレートを入れ替えて疲弊を軽減する対応をしているが、そのうち限界を迎える――が、問題はそれまでに時を要することだ。
「仕方ない――ファンネルッ!――」
ビームしか撃つことのできないファンネルはビームを弾くことができるサイコプレートは相性が悪いので使わなかったが、ここに来て展開。
「――静かにしてもらおうか――」
ファンネルの標的は量産型νガンダム――ではなく――
「これで煩わしさが減る」
狙ったの艦艇の主砲や副砲、そしてミサイル発射口。
敵は量産型νガンダムだけではない。MSや艦艇の攻撃が絶え間ないと表現が合うほど襲いかかってきている。
それらを速度を落とさぬように躱し、時には受けていたが、その分だけ攻撃機会が減り、進みも遅くなる。
ニュータイプに対してファンネルはあまり有効ではない。MSは数が多い上にニュータイプほどではないが躱されることもある。ならば狙うは大きく、愚鈍な艦艇から黙らせること選択し、見事成功した。
艦艇を沈めるにはファンネルでは火力不足であるが、砲塔やミサイル発射口の破壊程度なら可能である。