第六十二話
ハマーンと話し合った結果、資源ではなくスクラップを回してもらいMSを何機か仕上げることで妥協した。
通常、スクラップというのは資源回収、つまり再精錬から始めることになる。
しかし、再精錬はエネルギー自体は太陽光により困ることがほとんどないとはいえ、発電設備は無限ではなく、設備の消耗や合金の分離に使う物資なども消耗する上に人件費などなどで費用が嵩む。
私がスクラップからMSを作ると一律とは言えないが大体半分程度の費用で完成する。
もっとも私の開発、研究時間を削らなければならないのでそれに見合うかと考えると否としか言えないが先立つ物(資源)がない以上、何かを犠牲にしなければならないのだ。
「……私は確かMSを作ってくれと言ったはずなんだが……」
「昔の人は言った。大は小を兼ねると」
「だからと言ってアレン・ジール3機はやり過ぎだろう。それにIフィールド発生装置はどうしたんだ?そんな材料はなかったはずだが」
「私の資源の備蓄から出した。やはり作るならこれぐらいでないと、な?」
「同意を求められても困るのだが……それに、随分と変わっているようだが」
「同じものを作っても面白くないからな。耐G対策としてリニアシートと全天周囲モニター、そしてやっつけ仕事だがコクピットに脱出機能を付けた。更に開幕火力の底上げとIフィールド対策としてミサイルコンテナを追加した。ミサイルコンテナで重量が増えた分を補うためにコンテナにスラスターも増設させることで加速性は下がったが、機動性は保つことに成功した」
「ほう、それはなかなか……と言いたいところだが、私が依頼したのは地球圏の同志を支援するためのMSだったはずだが?そもそもアレン・ジールほどの機体をゲリラ組織に渡すことなどできんぞ」
そんなものアクシズにあるゲルググなりドムなり送っておけばいいだろう。
アレン・ジールは軍機であるから地球圏の残党如きに送るわけにはいかんが(デラーズ・フリートぐらい大きければ別だが)アクシズにアレン・ジール3機配備するなら通常のMSを10機送ってもお釣りがだろう。
「そうかもしれないが……それをするとMSパイロットの席が少なくなってパイロットから苦情が来そうだ」
言われてみれば結構カツカツでやっているアクシズで10機ものMSが減ればそれだけパイロットが余ってしまうことになるのか。
パイロット育成には金が掛かっているから余らすというのは勿体無い。
「それは頭数としてガザCにでも乗せておけ」
「……ガザCは素人の域を脱したパイロット達には不評なのだ」
だろうな。
運動性能自体は後期に開発したザクやドム、ゲルググに劣り、攻撃力こそエネルギーCAPを採用せずにMSと直結する大出力メガ粒子砲であるナックルバスターで他を寄せ付けないが機体自体の耐久力の低さもあって汎用性が低く、自走砲としては評価できるがMSとしての評価は低い。
まぁ素人を戦場に出すためのMSなのだから仕方ないがな。
結局、ゲルググを10機ほど地球圏に送ったそうだ。
もっともしばらくハマーンに愚痴られたから次回からは趣味に走らず、普通に要望に応えることにしようと思う……多分。
シャアからの続報が届いた。
反地球連邦組織との接触に成功したそうだ。
そこから得た情報ではティターンズの圧力や横柄さが日に日に増大しており、反地球連邦、もしくは反ティターンズの機運が高まっているのは事実なんだそうだ。
……嫌な予感しかしないな。
地球連邦に対抗する者が増えることはアクシズにとっていいことであるはずなのだが、その機運はアクシズのタカ派を煽ってしまいかねない。
ティターンズという組織だけを相手にするならまだ勝てなくはない……かもしれない。
その勝てるかもしれないというのが問題だ。
これが地球連邦という圧倒的な存在だったならまだ押さえ込むことができるが、ティターンズという下部組織だけを見れば勝てるかもしれないという幻想に囚われかねない。
これでティターンズが何かスペースノイドに対して大義を与えるようなことをすればアクシズは動き始めかねない。
本当に嫌な予感がする……ああ、自分の能力が忌々しい。