第六十三話
案の定というかなんというか……シャアからの報告は何処からか漏れ出し、アクシズの軍人達に広がってタカ派の士気高揚に手助けしている。
それに釣られるようにアクシズの住民も活気付いて収めるのが大変だとハマーンがぼやいていた。
ガス抜きとして大々的にドキドキッ!アクシズコンペティションをボロリッもあるよ!が開催される事が決定した。
「……誰だ。こんなタイトルを付けたのは」
ネーミングセンスは間違いなくないな。
そして、これを採用した奴らはアホに違いない。
さて、このコンペティション、お題はガザCが素人が扱える砲撃戦主体のMSであるため、その正反対である前面に立てる玄人向けのMS、という至極もっともなものになった。
参加するのはアナハイム、ニュータイプ研究所、兵器開発部が2つに分かれて参加という感じだ。
私?もちろんそんな面倒なのは不参加……と言いたかったがハマーンとガトー中佐に請われて断れずに参加することになった。
おそらくガトー中佐はハマーンに協力させられただけだろうがな。
「せっかくガンダリウムγの設備が完成したというのに……まぁいい機会でもあるか」
希少金属をほぼ使わないガンダリウムγの精錬設備がついに完成した。
さすがに畑違いの開発は随分時間がかかったな……というか……これ、ガンダリウムγだよな?見本より若干軽いのだが……いや、強度的には変わりないし、粘度も……とりあえず、要点は満たしているのだからいいだろう。
とりあえずコンペティションにはザクIIIを……いや、アレは汎用性は高いが玄人向けとは言いづらい。
決して悪い機体と言っているわけではない。今回のコンセプトにあっていないだけだ。
「前線で戦う機体ということは重装甲、重装甲といえばドム……だろうな」
ドムか……シャアに渡したMSの設計図がドム系をモデルにしていたが……まぁいいか。
目指すところは重装甲にして高機動、運動性も良く、そして殴り合いに強い、こんなところか。
重装甲、高機動、運動性というのは両立させるのは難しいが幸い、軽量で頑強なガンダリウムγが量産できるようになったのだからふんだんに使えば特に問題なくクリアできるだろう。
「しかし、コンペティション開催宣言から2ヶ月というのはさすがに無茶振りだろう。私は問題ないが凡人達には厳しいだろう」
……しかし、アナハイムが参戦とは、少し期待してしまうな。
兵器開発部が悪いというわけではないが、どうしても実戦から遠い位置にいる——いや、これは私自身にも言えることだが——ため、連邦やティターンズのMSのデータが満足に手に入らず、開発に苦労していた。
1番新しいデータが星の屑作戦当時のGPシリーズのデータとノイエ・ジールやアレン・ジールの戦闘によるものだが……これらはあまりにも特殊な機体過ぎて通常のMSを製造する上ではあまりあてにならない。
それに連邦が対処を行っていた当時の機体はGMIIなどの一年戦争から少し毛が生えた程度の機体しか存在していなかったのも痛い。
アナハイムも連邦とティターンズのMS利権から叩き出されてしばらく経つが、地力の違いもあるがあちらは地球圏ジオン残党にMSを供給したりして生きたデータを取ることができているはずだ。
そういえばドダイ改は水中運用を除いたものをいくらか生産するらしい。
反地球連邦組織が軍事活動を行うかどうかは不明だが、それに備えておくとかなんとか……まぁどうでもいいがな。
さて、あっという間にコンペティションの日が訪れた。
私が用意したのはドムの発展系で名前をドライセンと名付けた。
ビームランサー、ビームトマホークと近接武器を2種類も持たせ、他にある武器は腕に内蔵された3連装ビームガンぐらいだ。
一応ジャイアント・バズやゲルググのビームライフルなども装備できるがそこはパイロットの選択次第だな。
ちなみに玄人と言ってもエースが乗るというわけではないのでGP01の大型スラスターユニットはおあずけだ。コストも掛かるし、リニアシートで耐Gを施してなお万人向けではないからな。
さて、他のところの機体は……まずは兵器開発部その1、ジャジャという妙な名前のMSだ。
どうやらギャン系の流れを汲んだ機体のようでどこか騎士っぽいデザインをしている。そうなると高機動型だろうな。目立つ武装は何と言っても銃剣だろう。
玄人向けというコンセプトに間違いはないがそんな扱いが難しそうな武器をわざわざ持たさなくてもいいだろうに。
そして兵器開発部その2はガズ、名前からするとガザシリーズのような気がするがデザインを見ると1発でガルバルディ系のものであることがわかる。
こちらはより接近戦を重視していて、ランスがなんとも雰囲気を醸し出している……実用性があるかどうかは別だが。
と言うか、どちらもギャン系のMSだな。
まぁギャンのコンセプトは確かにマッチしているか。
私が連想した前衛は重歩兵で、兵器開発部は騎士を連想したという違いだろう。
ニュータイプ研究所からはハンマ・ハンマという機体が出てきているのだが、どうも未だに未完成らしく、慌ただしく作業しているのが目に入る。
コンセプトはイマイチ理解できないが、ニュータイプ研究所が開発した以上、ニュータイプ以外が扱えるものではないだろうから勝負という意味では論外、同じニュータイプ研究者としては興味がある。
そして、肝心のアナハイムだが、リック・ディアスという明らかにドム系……というか以前私がシャアに渡したものだろう。
ただし、こちらも完成しているとは言えないようだ。
「……というか他のところは全て試作機ばかりだな」
「一応言っておきますけど、普通コンペティションで量産前提の機体なんて出しませんからね!!」