第六百二十二話
「そろそろ我々の宿命も幕引きとしようかアムロ」
「暗い――暗い――光が、光が――欲しいッ!」
現状の優劣は明白である。
フィン・ファンネルは全て撃墜され、右手左足が切り落とされ、ガンダムタイプの頭部も半分が吹き飛ばされているというボロボロなアムロと多少装甲が溶かされているが機能は損なわれない程度の警備であるフル・フロンタル。
身体能力的には強化された上に思考能力が低下した代わりに本能を優先するようになり、ニュータイプ能力も強化されたアムロだが、今まで培ってきた経験や操縦技術は失われ、ニュータイプ能力の強化されたと言えば聞こえは良いし、事実ではあるが最大の欠点もあった。
本能を優先するため殺気を感知しやすく、そして反応速度も速い。しかし、逆に言えば殺気に反応してしまう、できてしまう。
そしてフル・フロンタルは言うまでもなく歴戦どころか世界トップクラスのパイロットである。唯一劣る点があるとするならばニュータイプ能力である。
その弱点と言えない弱点もふんだんに使われたサイコ・フレームとアムロの強化によって感情が駄々漏れとなっている。そのせいで機体スペックの差や強化された身体能力など優れているが、帳消しどころかマイナスになってしまった結果が――。
「まだ――まだ――僕は負けて、負けて負けてない」
「この状況で諦めないことには敬意を払うが――」
王手、もしくはチェックメイト。
スラスターも7割を破壊され、武装も尽き、もう回避することも抵抗することもできないまさしくその言葉がピッタリな状況である。
「――チッ、アムロ。君は物語の主人公なのか。それとも私が敵役なのか。どちらだろうな」
殺気を感じて回避行動を取り、その後にメガ粒子砲とは比較にならない出力のビームが通り過ぎた。
絶体絶命のこの状況で単独での打開は不可能――しかし、それが単独でなくなる。
「ΖΖのハイメガキャノンか、資料でしか見たことがなかったが馬鹿げた威力だな」
先程のハイメガキャノンを放ったν-ΖΖを始めとし、量産型νガンダム、ロズウェル・ジェスタ、合計12機が並ぶその光景は並のパイロットなら死刑場のそれだろう。
「フィン・ファンネルか……全く、鬱陶しいものを開発してくれたものだ」
攻撃手段としてフィン・ファンネルが有効でないと判断し、バリアとして展開して守りを固めている姿にため息が漏れた。
スパシ・ジャジャは今、ビームライフルとビームサーベルしか装備していない。
つまり、有効な攻撃手段がほぼないのだ。
「これは骨が折れそうだ」
――と呟くフル・フロンタル――いや、シャア・アズナブルの表情はどこか安堵の表情を浮かべていた。
アムロ・レイ。
宿敵、愛する者の仇、戦友。
一言ではとても言い表せないその心情ゆえに、今のアムロ・レイを見るに耐えないと共にこのまま殺してしまうというのも迷いがあったのだ。
故に、殺さずに済んだことを本人が自覚はないながらも良かったと思ってしまっていた。