第六百二十三話
「ようやく1機か」
ロズウェル・ジェダのコクピットをサーベルが貫いて漏らしたフル・フロンタルの一言。
数の有利とフィン・ファンネルバリアの防御性能的有利を活かして負けない戦いを続けていた。
そこでフル・フロンタルは一芝居打った。
一部のスラスターが故障したかのように見せるために使わず、使わないように立ち回った。
それに気づいた1人が戦功を焦って独断で近接戦を仕掛けた結果がこれである。
「兵士としてもニュータイプとしても半人前で助かるが――気分は最悪だな」
兵士として多くの敵を殺してきた。
一年戦争ではこんな未熟な兵士など当然のように存在した。
当時は間違いなく国家規模の生存競争だった。だからこそ学徒兵などという存在が許されたのだ。
しかし、今は戦時ではなく、今回のネオ・ジオンの討伐も公的には規模の大きい犯罪組織の摘発に過ぎない。
今の状況をわかりやすく言えば殺人犯を捕まえるのに警察官ではなく高校生を駆り出しているようなものである。
いくら人殺しに慣れてしまっているフル・フロンタルとはいえ気分がいいものではない。
「もっとも私が言えた義理ではないが」
自身もこちらに来る前にクェス・パラヤという13歳(そんなに若かったんだね?!ジュドー達より若いとは思えない)の少女を戦場に立たせていたのだから。
ロズウェル・ジェダを討ったことで状況に変化することとなる。
ロズウェル・ジェダに乗っていたのはこのニュータイプ部隊のムードメーカー的存在であった。
ムードメーカーというのはいる間は周囲を調和していい傾向へと導くが、逆に不在時や失われた時の反動は大きく――
「仇討ち、か。その気持ちは理解できるが――」
全体的に防御から攻撃へと転じた。
バリアを張って防御に徹していたフィン・ファンネルが攻撃に多く割かれる。
「ニュータイプとはいえ戦場で感情に身を任せるとは……愚かな」
スラスターの故障と見せかけたままで無数に踊るフィン・ファンネルを次々と落としていく。
「手札が割れていてその上でこのような素直な機動では落としてくれと言っているようなものだな」