第六百二十五話
「――どうやら地球でも動き始めたようだな」
ハマーンが必死でアムロ・レイを捕捉しようと奮闘しているのを眺めつつ、よほどの失敗がない限り問題ないだろうと地球で大きく動く気配に意識を割く。
「ネオ・ジオンの犯行だと思われていた大規模誘拐事件ですが、残念ながら軍部が主導したという証言が取れています」
「他にも人身売買や非人道的な実験が行われているというデータもございます」
「軍部の増長甚だしい!首相はどうお考えか!!」
ネオ・ジオンとの戦闘の最中であるというのに地球連邦政府の緊急議会では別の議論が巻き起こっていた。
大規模誘拐が地球連邦軍主導で行われたことが市民レベルにまで露呈したのだ。
仕掛け人はハヤト・コバヤシ、つまりカラバが仕掛けた策略あり、その裏で糸を引いているのはハマーン閣下であり、その絵を描いたのは私である。
ハマーン閣下は、ネオ・ジオンは地球に帰還した頃には地球征服を目論んでいたのは確かだが、今ではそれも萎み、サイド3、アクシズ、後はソロモンと数基のコロニーが残り、過去にはデラーズ・フリートの茨の園という拠点を構え、現在はデブリ帯と化し、前の世界では私達が本拠を構えていたサイド5を抑えたいと考えている。
そうするには地球連邦に纏まられるのはデメリットしかない。
そこで密かにカラバと繋ぎを取り、人的資源よりも兵器が不足している(私達が落としたせいで)ところにMSを提供(ミソロギア製)して政府ではなく、政治家共に圧力を加えて今回の流れを作り出した。
そしてちょうどよくニュータイプ研究所に大きく関わっている政治家が目の前の討伐軍にいる。これは狙っていたわけではなく、本当に偶然なのだが捕虜とすることができれば戦後にカラバ派や鳴りを潜めていたエゥーゴ派の政治家達が影響力を拡大して相当有利な展開へと持っていけるだろう。
それに加えて実働隊の戦力補充が成ったことで連邦軍の基地をいくつか乗っ取ることにも成功している。
カラバはティターンズやエゥーゴに代わって新たな派閥として立つことができればネオ・ジオンにとっては大きな一歩となるだろう。
……ミソロギアとは違って戦後を気にして戦わねばならないのは面倒なことだな。
「後はこの戦いを終わらせるだけだが――ハマーン、あまりのんびりしていると負けてしまうぞ」
ハマーン閣下が次々と艦隊を撃沈、もしくは無力化していき、政治家が乗る戦艦まで後少しとなっている。
「――なんとしても間に合わせるッ!!」