第六百二十七話
「強化人間よりも嫌悪すべき存在がいるとは思いもしなかったが――同時に哀れでならんな」
脳を焼いて無理やりニュータイプとして覚醒させるナイトロシステム。
機体から漏れる蒼い炎はパイロットの命が燃える輝き。
フィン・ファンネルとファンネルがせめぎ合い、落とし落とされ互角の戦いを繰り広げるだけで意味をなさない。
本体同士はデルタカイの長射程を誇るロング・メガ・バスターで狙い撃つ。
Iフィールドがオーバーヒートにより機能が停止しているため有効打となり得るのだが、その巨体に似合わない俊敏な動きでクィン・マンサは躱して――次の艦へと進む。
狙撃されるのは鬱陶しくはあったが、所詮は不意打ちですらない狙撃であり、強化人間と化したせいで感情がむき出しで目を閉じても躱せるのだから障害とならない。
4発避けると効果がないとわかり、これでは艦隊を守るという目的が達成できないと今度は変形して距離を詰めることに切り替える。
速度が落ちたクィン・マンサと元々一撃離脱が前提であるデルタカイの機動力ではさすがにデルタカイに分があり、特にハマーン閣下は攻撃をしないこともあってグングンと互いの距離は縮まる。
「代償を支払ってこの程度とは……哀れだ」
クィン・マンサを追う形となっていたが、突如反転し、今までよりも更にスラスターを吹かして加速する。
互いが高速で近寄ることで瞬く間に空間が埋まっていく。
デルタカイのパイロットは突然の展開に反射的にMS形態へと移行し、ビーム・サーベルを引き抜く。ここまでの反応速度はさすが扱いの難しいΖシリーズのパイロットに選ばれただけはあると言える。
しかし――
「文字通り付け焼き刃に過ぎんな――キュベレイだったなら苦戦しただろうが、このクィン・マンサが相手では、な」
この巨体でキュベレイ以上の追従性を誇るクィン・マンサとプルシリーズと死闘を繰り広げたことによって第2の覚醒と言っても過言ではない成長をしたハマーン閣下にとって突如として強化人間とされ、訓練もされずにサイコミュを使わされているので十全どころか半分も引き出せていない、しかもそのせいで己の精神コントロールすらも上手くできていないとなれば勝敗は自ずとわかるというもの。
決着はクィン・マンサのビーム・サーベル袈裟斬り――ではなく、まさかのその拳――正拳突きによって幕引きとなった。
そしてデルタカイを蹴り飛ばす。
「コクピットを潰したが高く売れればいいのだが……珍しいシステムを積んでいるようだが、無事を祈ろう」
蹴り飛ばした方角は予めアレンと話し合いで決められていた方角であり、ミソロギアが捕獲し、査定され、戦後に行われる支払いの打ち消しされる。
命がけの戦闘中ではあるもののネオ・ジオンはミソロギアに大きな負債を抱えているので少しでも削らなければそれこそミソロギアに消されてしまうことになる。