第六百二十八話
「――最後の最後まで外すとは、本当に運がない」
追いついてきたMSを蹴散らしながら艦に接触して政治家探しを続けたが、結局最後まで空振り、マゼラン級の1隻へと向かっている。
「しかし戦果目的の政治家風情がまさか艦隊の最前列にいるとはな。勇猛か無謀か慢心か……」
おかげでとんぼ返りしているために次々と駆けつけてくるMSを片っ端から消し飛ばして進む。
ちなみにアレンは居場所を知っていたのでハマーン閣下を憐れんでいたりする――ちなみにアレン人形と近くにいたことでアレンの気配なら察知しやすくなっているハマーン閣下がそれを感じ取り、余計に苛立たしく思っていたりするのは余談である。
ついでにいえば政治家がなぜそんな位置にいたかというと『艦隊の先頭にいる俺、かっこいい!』という自己顕示欲によってハマーン閣下を出し抜いたのだから何が功を奏するかわからない。
ハマーン閣下の弁護をするならSFSによって得た速度を艦隊に入ってすぐに失っていては後ろから迫るMS隊に早く追いつかれることになるし、艦砲射撃を長く受けることになり、そして何よりIフィールドの稼働時間を費やすことになるのだからやはり最初に最前列のマゼラン級を選ぶという選択肢はない。
「見えてきた――ん、よく見ると通る時に無力化した1隻か」
航行こそできているが武装は機銃程度しか残っておらず、主砲副砲どちら溶かされ、船首は発射口からミサイルが発射されたタイミングでファンネルに攻撃されたことで爆発したことでほとんどが吹っ飛んでしまっている。
「……生きているか?」
一応艦橋は無事で、政治家が武装付近にいることはまずないがあまりにも酷い有り様で自分がやったことではあるが心配になるハマーン閣下。
万が一にもここで戦死されてしまえば連邦軍どころか連邦政府としても引けなくなる可能性が高く、そうなってしまえばネオ・ジオンが終わるか、それともミソロギアに身売りするしかなくなる。
「まだ対等……に近い今ならともかく、劣る存在となってからミソロギアに身売りなどどんな待遇を受けることになるか……そもそも身売りができるほど組織として保てるかも怪しいが――などと言っている場合ではないか」
マゼラン級を守ろうとジェガンだけでなくジェダも立ち塞がる。
「あの数――どうやら無事のようだな。助かったか」
ただのマゼラン級を護るにしては数が多く、明らかに他の部隊と気配が違う。
他の部隊は殺気が強いが眼の前の部隊からは護るという意思が強く感じ、ハマーン閣下は政治家がそのマゼラン級にいて、無事であることを確信した。
「随分時間を無駄にした。手早く終わらせるとしよう」