第六百三十一話
戦えば後処理が待っている。
私達が主導していたわけではないが、ネオ・ジオンほどではないにしても忙しくなる。
ダメージを負ったアッティスの修復に整備、消費したファンネルやミサイルの補充に生産、レナスは数こそ減っていないが整備は必須。後はハマーン閣下から鹵獲機の買取査定をお願いされているのでそちらの値付けもしなくてはならないし、技術解析も行わなければならない。
「とはいえ、フィン・ファンネルは前の世界のものより劣るし、機体性能もそれほど差があるわけでもないし、唯一デルタカイのナイトロシステムだけは目新しいが――」
強化処理を行うシステム、ねぇ――脳に直接作用するシステムは考えないでもなかったが、リスクが伴う上にあまりコストパフォーマンスが良くない。
それにクローンよりもナイトロシステムの方が悪評に繋がる可能性が高いのも懸念点としてある。
クローンは所詮生命が双子に限定されて生まれるだけで、個を見ればただの人間に過ぎないと思える。世の流れ次第では受け入れられることがあるだろう。時を渡ればそういう世界もあるかもしれない。
しかし、このナイトロシステムは脳を焼くことで今までの人格を脳を焼くことで作り変えてしまう。それはある意味死よりも酷い行いと言える。
「それに焼かれ方が一律ではないせいで治療を確立できないことも面倒な要因だな」
ナイトロシステムとは厳密に言えば強化処理をするというよりもサイコミュを使えるように脳を適応させるという方が合っている。
そしてサイコミュの根幹とも言える脳波を強く発する箇所は人それぞれ、そして焼かれるのはその箇所であることから個体によって違いが生まれる。例外としてはクローンであるプルシリーズぐらいだが、それでも多少の誤差が生まれる。
「強化人間人格OSと組み合わせればオールドタイプの即戦力化には向いているが、そこまでする必要性を感じないが――時渡りをすれば必要なこともあるかもしれないか」
通常の人間よりも早熟であるプルシリーズではあるがそれでもミソロギア基準の最低実戦レベルまでには年単位の教育が必要だが、サイコミュを起動させて脳を焼くことで攻撃的な性格へと変貌させるナイトロシステムと操縦者の補助に優れている強化人間人格OSをかけ合わせれば人間さえいれば戦力化することができるのは非常手段としてはありか。
この世界では連邦とネオ・ジオンが組んだとしても大した脅威にもならないので使う機会などないが。
「とりあえず全種類復元して保管しておくとするか。幸い保管場所は有り余っている」
コロニー2基とオイコスに総人口5000人にも届かない程度しか存在しない。
生産や研究設備、MSや艦艇があるにしてもその容量はまだまだ余っているし、なければ時渡り後に世界と戦争、なんてこともあり得るので更に増設してもいい。
「いや、コロニーは後4基用意するか?」
オイコスを基点として上下前後左右にコロニーを配置し、コロニーにフィン・ファンネルと同じ要領でビームバリアを展開できるようにするのもいい。
コロニーの維持費なんて居住区として整えなければ地球の施設ほど劣化しないので必要はない。
「また廃棄コロニーを見繕うか、それともコロニー建造のノウハウ蓄積のために自作するか……」
廃棄コロニーだったらハマーン閣下に頼めばそれ相応の対価で交換してくれるだろう。しかし、連邦の反応が気になるところだ。
廃棄されたコロニーとはいえ、コロニー落としをするには十分だ。先日、防いだとは言えグレミー・トトがコロニー落としを決行した。また行われないとも限らない。と考えることは不自然ではない。
戦いには勝利したものの現在は停戦中であって休戦や終戦などではなく、厳密には連邦政府が主導権争いと責任の押し付け合いで纏まらない現状で変な動きをするといらぬ方向に転がりだす可能性がある。
その引き金がネオ・ジオンなら問題ないが、私達が引き金となってはさすがにハマーン閣下に悪い。