第六百三十五話
とはいえ世界征服だ、と当日から行動できるわけもない。
宇宙程度なら支配するのに準備の必要もないが、地球を視野にいれるとなると距離の壁や大気の壁がある。そして地球には海山川などの自然、ハリケーンや地震、火山の噴火など災害など人の手によるものではない壁が多く存在するためMSを全天候対応せねばならない。
プルシリーズやMS、MD、母艦からの何から何まで増産――はもちろんだが、ジャミトフはともかく、シロー達や新旧のカミーユ達と言った比較的常識人達と話し合う必要がある。
「面倒事が多い……が、確かにハマーンが言うように経験にはなるか」
今まで必要に迫られてから手掛けて来ることが多かったが、これから先のことを考えれば必要に迫られるというのは命の危機、ミソロギアの危機である可能性は大いにある。
私の偏った人生経験とミソロギアの組織としての厚みを増すにはいいかもしれん。面倒だが。
「何より急務はMDのバージョンアップとクィン・マンサの次世代機か」
量のMD、質のクィン・マンサ。これらの充実は今までの方針では必要なかった。
時渡りを行うと決めてからにしようと考えていた。
この世界で脅威と言える敵は極少数、しかも前の世界の決戦時のようなまとまって運用されることはない。そういう狙いもあってニュータイプの情報を連邦にリークした。
つまり、既存のMS、MDで戦力的に問題がなく、技術は日進月歩。現段階で最先端であっても1年もあれば最ではなくなることが多く、新機体の設計をしている段階で新たな必須級の技術が生まれたりしたらまた設計段階からやり直し、ヘタをすると生産に入った瞬間に生産停止、なんて事になりかねない。
しかし、世界征服を目指すなら妥協しておくべきだろう。
「パノプリアの増産もしておくか」
パノプリアはクィン・マンサの機動性を上げるのはもちろん、継戦能力と航行距離を伸ばすことができる。クィン・マンサの唯一とも言える弱点である継戦能力の低さを補えるのは大きい。
それにしても皮肉な話だ。パノプリアの原点はTR-6インレであり、その目的は外惑星への侵攻と地球圏の盤石な支配。それを私達が引き継ぐのだから。
「そういえばインレ用駐屯用宇宙ステーションの計画があったな」
専用母艦も計画にあったと記憶しているが、そちらは母艦級でいいとして……宇宙ステーションか。確かにパノプリアを常に運用するとなると補給に難があるため検討する余地はある。問題は人員が足りるかどうか、か。基地を増やせば人員もその分だけ必要だ。
「結局は人的資源の不足か」