第六百三十六話
「遊び半分……というわけではないだろうが、そんな気軽に世界征服と言われても……そもそも私に無謀だと諭した張本人がそれをしようとするとは」
「まだ計画段階だ。そういう可能性もあるという話だ」
「私に話したということは事を起こす可能性が高いということだろう?」
確かに、そうでなければ戦後処理で忙しいハマーン閣下にこんな大それた現実味のない計画を話すようなことはさすがにしない。
「ハァ……動き出すのはいつ頃になりそうなんだ」
「1年後を予定している。連邦が軍縮に踏み切るなら半年に早めるが、ネオ・ジオンを討伐できなかった以上は拡張はせずとも今までの規模を維持するようなので1年後だ」
「軍縮で早める?普通は逆では……」
「弱い連邦軍を攻めては簡単に占領してしまう」
「少し驕りが過ぎている気がするが?連邦軍はそれほど甘いものではない」
「それなら嬉しいのだがな」
ハマーン閣下が言いたい意味も理解できるが、先の戦いで自分が成し遂げたことを忘れているのだろうか。
自軍を囮にしたとはいえ、少数で正面を突破し、そして艦隊を実質壊滅させている。
これは素晴らしい功績だ。
しかし、こう言ってはなんだが、私達ならもっと苦なく成し遂げることができる。これは驕りではなく事実だ。
あのニュータイプ達が全員アムロ・レイやシャア・アズナブル、ハマーン・カーン、カミーユ・ビダン級にでもなればさすがにきついだろうが、エース級の中でも上位になれる存在はせいぜい10人届かない程度だろう。その程度ならMSの質と数で押し切れる。
ハマーン閣下のクィン・マンサに触発されて新たなMSを開発中らしいが、あのクィン・マンサはサイコ・フレームを大量に使われている以外はキュベレイ・ストラティオティスよりも劣る性能である。
そのサイコ・フレームもハマーン閣下のクィン・マンサ運用データのおかげもあってサイコミュF型のバージョンアップもでき、更にセキュリティ強化と性能向上が成った。もっとも大型化してしまってMSに載せづらくなったが、それを解決するのも開発者の醍醐味とも言える。
それはともかく、つまり何が言いたいかというとMS技術は簡単に埋まるとは思えない。むしろ埋まってくれるならもう100人ほどニュータイプをリークしてもいい。
「……世界征服ということはネオ・ジオンとも戦うつもりか」
「そちらが動かなければ今までの関係を解消することはない」
ネオ・ジオンはそうでもないが、やはり『ハマーン・カーン』という存在に思い入れがある。
今までも幾らかサービスしてきた。少なくとも私目線では。
そして今回もその対象だ。
まぁ私達の勝手で戦乱を巻き起こそうというのだから多少はサービスしても、それこそ最近ハマーン閣下贔屓が過ぎると嫉妬7割で訴えてくるハマーンも認めるところだ。なにせこれを言い出した本人なのだから。