第六百三十八話
「これが水中専用MD」
「MD、と言っていいのかこれは」
「さすがアレン。なかなかえげつない攻め方をするわね」
ジャミトフは疑いの目を、ハマーンはただただ感心している。
水中、もしくは水陸両用は必要なのはわかっているがわざわざMSを用意する機にはなれなかった。汎用性が低い。そして追従性が著しく低下するのはニュータイプの長所を殺すということでもある。
そんな効率が悪いものを開発設計するのはやる気が起きないのでMDとなったのは自然なこと。
「それぞれをクジラ型母艦、マグロ型魚雷艇、イワシ型偵察艇という」
「見たままだな」
「優雅に泳いでるわね」
余談だがコロニーの養殖プラントで泳いでいるそれらの種類は厳密に言えばシロナガスクジラ、クロマグロ、マイワシだ。
「マグロ型魚雷艇は厳密には魚雷艇ではなく、魚雷そのものなのだが、単独航行させる性質上艇とした。イワシ型偵察艇は文字通りだから説明は省く。クジラ型母艦はそれらを製造する役割を担うことになる」
「条約で捕鯨も養殖も禁止され、マグロも養殖されたもののみ流通を許されている。つまりこの2種類は一般市民が手を出すことはない……それはわかったが、イワシ型はなぜだ?」
「イワシほど小さければ分散してしまえば発見しづらいからだ」
水中探知で使われるのは昔から変わらずソナー、超音波の反射音から探るものだ。イワシは群れで動いているからこそ捕捉できるが1匹だとその小ささからまず見つかることまずない。1番可能性が高いのは本物のクジラなどに捕食されることだろうが、だからこそのクジラ型母艦でもある。
「これらは人工心臓、人工筋肉で動いていることから培養カプセルで生成するため低音、マグロ型魚雷艇とイワシ型偵察艇は爆薬と小型ソナー以外はクジラ型母艦が捕食した魚を材料として作られることで補給も少量で済む」
皮、身体を支える筋肉とフレームとなる骨、動力である心臓や心臓を動かすエネルギー(カロリー)も全て――
「……つまりこの筐体と動力は全て現地調達だということか」
「さすがアレンね。こんなものがうろうろされたらシーレーンなんてろくに使えないわね」
機雷の散布なども考えたが無差別に過ぎるし、能動的な選択、つまりこちらから攻撃を仕掛けることができないという選択肢を狭めるというのは非効率なのでこのような形となった。
「それにクジラ型母艦は生産能力を排せば効率は悪いが輸送手段とすることも可能だ。もっとも大した量ではないし、速度もそれほどではないので使うことはないだろう。少なくともこの世界では」
「予定では隠密行動なんてする予定がないからな」