第六百四十話
「シミュレーション終了……こんなにしばられて勝てるわけないじゃない!」
「あ、対私達シミュ終わった?」
「ええ、惨敗よ!惨敗!!」
プルシリーズが現在熟しているのはシミュレーションであるが、今までは戦術規模のシミュレーションしかなかったところ、世界征服を視野に人類生存圏規模の戦略シミュレーションが新たに導入された。
そして今騒いでいる設定は――
「地球連邦で私達の侵攻を止めるなんて無理無理!」
侵攻するミソロギア、防衛する地球連邦。そして自分達は地球連邦側設定である。
「ネオ・ジオンよりは国力あるけど柔軟性がないよねー。ネオ・ジオンならサイド3放棄してアクシズでもう1回辺境まで逃げられれば粘れるけど連邦は守る面積広すぎ」
この世界のネオ・ジオン設定も推奨はされていないが存在はしている。
しかし、敵対関係ではないスタートなので難易度は連邦よりも優しいものになっている――もっともそれはミソロギアの性質を熟知しているプルシリーズであるからであって、知らない人物が挑戦した場合は、見えない地雷を踏んであっという間に敵となり、連邦などよりも容易く蹂躙されてしまうこと間違いなしである。
ミソロギアとの外交は単純明快だが、暗黙の了解や拡大解釈による揚げ足取りのようなやり取りは通用せず、連邦と戦争を起こそうとする組織がハマーンなど一部は優れていても連邦より国力がない組織に遠慮する道理はない。
「それに被害が出るたびに世論が騒ぐし、遺族年金とかで経済圧迫するし面倒が多過ぎるよー」
「私達は行き過ぎにしても民主主義は本当に戦争に向かないね」
「これでイージーモードっての信じられない!わかるけど!!」
「お遊びでハードモードに挑んだ子がいるけど、核、生物兵器、コロニー落とし、コロニーレーザー、マスドライバー攻撃、中位ナンバー以上が戦闘時高確率で発光現象を発生、アレン人形大量投入、条約違反解禁とかもうやりたい放題だからねぇ」
「そんなん地球終了のお知らせじゃん」
「でも全部実現できる可能性が高いことなのがなんとも……」
唯一どうか不明なのは中位ナンバーの発光現象だが、サイコミュF型を搭載――まだ大きさ的に現行のMSでは難しいが時間の問題――すれば可能性がかなり高い。
「無理ゲー過ぎる……イージーではキュベレイシリーズ不参戦で主力はレナスとシルメリアだけなのに」
「キュベレイシリーズはノーマルから解禁ですからねぇ。それに上位ナンバーも」
「その状態でこの難易度ってやば過ぎぃ」
どうやって攻略したものかと頭を抱える姉妹を苦笑いで眺める姉妹。
なにせまだ自分自身も攻略できておらず、表に出していないだけで内心では差はない。
「あ、そういえばカミーユが異常に強いんだけど、あれ、バグじゃないよね?いい感じに防衛してたらイータに乗って出てきたと思ったら40機で囲んでやっと落とせるなんて……しかも落とせた原因がエネルギー切れの嬲り殺しにしてやっとだったよ」
「カミーユはミソロギアでも上位の下の方をウロウロしているんだから当然でしょ。つまり実質イージーモード最強ユニットだよ」
「えー、じゃあ上位ナンバーが本格参戦したら絶対勝てないじゃん!」
ちなみにカミーユはMSパイロットとしてよりも艦隊指揮や部隊指揮を重視して純粋なパイロットとしての訓練は控えめにしていたり、家族と過ごす時間も多く取っている状態でこれなので本格的に力を入れると上位ナンバーの中ぐらいには上がる。
「私達って外から見たら凄い理不尽だってことはわかった」
「だからって驕らないようにしないと。油断で死ぬなんて無駄死ににしかならない」
「もちろん。常在戦場がモットーだからね!」
「大丈夫かしら……姉妹ながら心配だわ」