第六百四十三話
「世界で最も孤立している……か、確かに居場所も今までやってきたことも失って世界から取り残されているのは間違いな。それで俺はこれからどうなる」
「誤解を生みそうだが包み隠さずにストレートに言えばニュータイプ研究の実験とプルシ――MSパイロットの教導を頼みたい」
実験という単語でピクッと身体が反応し、怒りや憤り、恐れといった感情が湧きだったのを感じる。
やはりトラウマとなっているか、皮肉なことに救いとはならないだろうが以前よりもニュータイプとして成長している。だが、無神経が過ぎるので口にしないでおこう。
「ここはニュータイプ研究所なのか」
目を鋭く、声には棘が含まれているのはやはりニュータイプ研究所には思うところがあるようだ。むしろ何も思うところがないならそれはそれで人間性を疑うが。
「正確には研究者が興味を持つものを研究するから、ニュータイプ研究所でもある、と言ったところだな。既に知っているとようにキュベレイはその姿形から分かりづらいだろうが、連邦軍が天使型と呼ぶ機体や大型ザンジバル級などはミソロギア独自に開発したもの、もっと正確に言えば私が作ったものだ」
「……つまりここは研究所ということか」
「どうだろうな。数十年は外部と取引を行わなくても生活ができ、コロニー2基とオイコス……大尉にとってわかりやすくいうとソロモンを所有して軍機なので細かくは言わないが現在のネオ・ジオンよりも戦力を有している組織がただの研究所と言っていいのかどうか私にはわからない」
現在ではなく、最盛期のネオ・ジオンよりも上なのだが言ったところで事実かどうかなどわからないだろうから控えめにしておく。
「コロニー2基にソロモン……」
(意味がわからない。普通に考えれば虚偽だ。しかし、この男が嘘をついているとはなぜか思えない)
「信じるかどうかは任せるが私はニュータイプと話す上で私は嘘をつかない。不都合なことは誤魔化さずに話せないと回答を拒否するので遠慮なく質問してくれて構わない」
「先ほどの言葉を聞くとあくまで私に選択権があるような気がするが間違いないか」
「治療の代価として多少のデータ取りなり教導なりに付き合ってもらう予定ではあるが、それが済めば引き止めるための交渉はするが出ていくことそのものは止めはしない」
「それは……こう言ってはなんだが緩いな」
「不満を抱いた状態で仲間に引き入れても仕方ない」
大尉にミソロギアとニュータイプ研究所としての質の違いを説明すると――
「身体の改造は気にかかるが、それも拒めむことができるというなら随分と真っ当なあり方だな」
それはクローン研究が主であるからなのだが、聞かれていないことを話す気もないし、軍機である以上はこの段階では話すという選択もない。
「大尉の知り合いとしてはカミーユ・ビダンとファ・ユイリィが所属している」
「カミーユはこの時期治療中のはずだが……ファ・ユイリィは確かカミーユの幼馴染だったか」
「おや、大尉はファ・ユイリィと面識がないのか。これは失礼」
前の世界では当然のように面識があったので勘違いしていたようだ。そういえばこの大尉はこの世界と似た未来の世界から逆行したとフル・フロンタルから情報を得ている。
カミーユ・ビダンは地球で活動していた時期があったようだが、ファ・ユイリィは地上に降りたのはティターンズとエゥーゴが相打った後で、アムロ・レイはその頃入れ違うように宇宙に上がっている。それに加えてアムロ・レイはカラバ所属だったな。類似組織とはいえ、所属が違えば会う機会などそうないだろう。
「それに私の知っているカミーユではないからな」
「大尉の世界のカミーユ・ビダンがサイコ・フレーム搭載のMSに乗ればあるいは再会もありえるかもしれんが」
カミーユ・ビダンの素質なら発光現象を引き起こして時渡りも実現できるだろう。
「さすがに彼にこんな不幸な目にあってまで会いたいとは思わないさ」
「ふむ……ならララァ・スンであればどうかな」