第六百四十五話
「人間の才能というのは侮れないな」
死者蘇生の実験には準備が必要なためにプルシリーズの教導を頼むことにしたわけだが――
「シャアもそうだが、大尉もニュータイプ能力や技術とは違う才能があるな」
戦場ではMSが平等ではない。
私が用意したMSやMDで圧倒的有利を作り出されている。
しかし今回のシミュレーションで使われたのは両方共大尉が乗っていた名もなき試作機、不便なので私はコードレスと名付けた。
特殊武装はなく、機動性、運動性に優れている故に純粋なパイロットの技量が露わとなる。
「サイコミュ兵器に慣れすぎているのもあるが、先読みとその対応が上手いな」
予知というほど未来は視えていない。せいぜい数秒の先程度だろう。
その程度ならプルシリーズ、それこそ新米でもできる。
問題は視てからの反応速度と対応速度だ。
プルシリーズに匹敵する反応速度をノーマルの人間が叩き出しているあたり人間か怪しいが反応しても対応できるかは別の話のはずなのだが、その対応は正解を知っているかのように迷いがない。
「大尉の先読みは確度の高い未来が1つしか視えないようだな」
私のそれは自身の力があり過ぎるために未来図が何十何百場合によっては何千と視える。その中から選び取るのに時間を要するのは想像が容易いだろう。
大尉はおそらく取れる選択肢は多くあってもその答えが最初から提示されているのだ。わかりやすく例えるなら私が数式を用いて最適解を探す必要があるが、大尉は最適解が最初から視えているような速さだ。
プルシリーズも先読みはできるし、大尉よりも先が視える。だが確度と対応速度が劣るため先読みした結果を大尉が変化させてしまい、新たな未来が視えるために更に対応に追われる。
最もプルシリーズは慣れない機体であること、そもそも大尉が最適解で素早く対応できているのは互いに武装が少なく、視る範囲が狭いからというのもある。もしファンネルが混ざれば大尉も対応速度が落ち、そうすればプルシリーズと差は少なくなり、もっといい勝負ができるようになるだろう。
しかし、実戦でもないのだから技術を磨くためにしばらくはこのままとしよう。
「ここのシミュレータは不思議だな。今まで使ってきたシミュレータは気配が掴めなかったがこれはまるで本当に相手がそこにいるかのような気配がする。これも君が作ったのか」
「その通りだ。とは言ってもこれは最近配備した最新型だが」
サイコミュF型を投入したシミュレータは今までニュータイプが不満を抱いていた気配まで再現する。
ただし、その気配は攻撃能力がない小型のファンネルを動かし、シミュレータ上の搭乗機と連動することで解決するするという力技であるため、膨大な空間が必要があるという欠点が存在する。とはいえ空間は十分に余っている現状は急ごしらえにしてはいい出来と言える。
(しかし、相手の気配が気になる。相手をした10人は全員別人のはずだ。気配も操縦の癖も違う。いや、操縦は似通ったものがあったがやはり別人だろう。だが、それとは違う、根本的な『なにか』が同じような気がする)
大尉は本来のニュータイプとしての能力である本質を理解する、理解し合える能力は低いはずだが、さすがに感じるところがあったようだ。
あまり連続してシミュレータを利用すれば気づかれる可能性が高いので合間になにか別のものを挟んでおくか。
「今度はシャアのデータと頼む」
「ここに来てシャアか……ありきたりじゃないか」
そのセリフ、後悔することにならねばいいがな。